ポストロック -ジャンル紹介とオススメ作品5選-


ポストロックってなに?

 ポストロックとは「どういった音楽なのか」を定義するよりも、「どういった音楽ではないのか」と定義した方がいいぐらい、意味のレンジが広いジャンル名です。

 ロックに「ポスト」という接頭辞が付いた、ポストロックというジャンル名。この「ポスト」とは、ラテン語で「後の」「次の」といった意味を持つ言葉です。

 その名のとおり、ポストロックとは「ロック的な楽器を用いて、ロック的ではない音楽を実行するジャンル」程度の意味に、とりあえずは理解しておきましょう。

 ロックであれば、ディストーション・ギターを用いたリフ、力強い8ビート、メッセージ性の強い歌詞、というようにある程度のロックらしい要素を挙げることができます。しかし、ポストロックにおいては、各バンドがそれぞれの方法で、新たな音楽を追求するため、おなじポストロックというジャンルに括られるバンドでも、その音楽性には大きな開きがあります。

 そもそも、やっている当人たちには「ポストロックをやっている」という意識も、おそらくありません。共通点は、ロックバンドに近い編成である、あるいはロックで使用する楽器を使っている、というだけです。

 また、ポストロックにカテゴライズされるバンドには、ボーカル不在の場合が多いです。これは、歌のメロディーが主要な要素であるロック(および多くのポップス)とは違い、バンド全体のアンサンブルや、音響を重視する態度のあらわれと言えるでしょう。

 変拍子や複雑なアンサンブル、レコーディング後の大胆な編集(ポスト・プロダクション)も、ポストロックの特徴です。

ポストロックのオススメ作品5選

 では、実際にポストロックとは、どういう音楽が鳴っているものなのか、5枚のアルバムを紹介しながら、ポストロックの概要と魅力をお伝えしたいと思います。当サイトは、USインディーロックを紹介するサイトですので、アメリカのバンドに絞りました。

 太字になっている部分は、バンド名、アルバム・タイトル、発売された年です。

Tortoise “TNT” 1998

 シカゴのポストロック・バンド、トータスの3rdアルバム。トータスは、ポストロックを代表するバンドのひとつです。

 本作『TNT』は、本格的なハード・ディスク・レコーディングを導入し、大胆なポスト・プロダクションを施したアルバムです。もっとカジュアルに言い換えると、それまではテープに録音していたのを、パソコンに録音し、さらに録音した音をパソコン上で切り貼りしたり、加工したりして、全く新しい音楽を作り上げた、ということです。

 Aメロとサビが循環するような明確な形式は持たず、ゆるやかに各楽器が絡み合い、ときにリラクシングな、ときに複雑なアンサンブルが繰り広げられるアルバムです。なにも起こっていないようで、次々と風景が変わっていくような、イマジネーションをかき立てる音楽が詰まっています。

 歌もなく、わかりやすい展開もありません。そう聞くと、ポストロックを初めて聴く人には、敷居が高く感じられるかもしれませんが、BGMかヒーリング・ミュージックだとでも思って、気軽に聴いてみてください。このアルバムの、落書き風のジャケットのように、ゆるい気持ちで(笑)

 明確な形式が無いということは、自由に楽しむことができる、次になにが起こるか分からないワクワク感がある、ということでもあります。

 前述したとおり、トータスはポストロックの代表格と言っていいバンドで、音響を重視した音楽性から「シカゴ音響派」と呼ばれる一派を代表するバンドでもあります。もし、トータスが気にいったなら、メンバーは別バンドや別プロジェクトでも活躍していますので、そちらもチェックしましょう。

 個人的には、ドラムのジョン・マッケンタイアが所属するザ・シー・アンド・ケイク(The Sea and Cake)と、トータスのメンバーが3人も参加するアイソトープ217(Isotope 217)をオススメします。ざっくり一言であらわすと、ザ・シー・アンド・ケイクはポストロック風味のギターポップ、アイソトープ217はジャズ版トータスです。

 また、トータスが所属するシカゴのスリル・ジョッキー(Thrill Jockey)というレーベルにも、多くの素晴らしいバンドが所属していますので、トータスにハマった方は、このあたりから世界を広げていきましょう。

Slint “Spiderland” 1991

 ケンタッキー州ルイヴィル出身のバンド、スリントの2ndアルバム。ルイヴィルは、ポストロックの源流のひとつになった街でもあります。

 1991年リリースのこのアルバムは、ポストロックの古典的名盤の1枚です。トータスよりも音はざらついていて、若干のアングラ感もあります。

 激しく歪んだギターや、複雑なアンサンブル、静寂と轟音のコントラストなど、ロックが持つかっこよさを、解体してから再構築したような1枚。ロックのパーツを使って、全く別の方法でロック的な興奮を再現するその音楽性は、まさにポストロック的と言えます。

 

Battles “Mirrored” 2007

 2002年にニューヨークで結成された4人組バンド、バトルスのデビュー・アルバム。アメリカ国内のレーベルではなく、イギリスのWarpからリリースされています。

 この1stアルバムの後に、タイヨンダイ・ブラクストンが脱退して3人組になってしまうバトルスですが、本当に凄い4人が集まったバンドです。

 本作『Mirrored』は、躍動感と立体感がすさまじく、多種多様なサウンドが入ったカラフルな1枚。2曲目「Atlas」のイントロのドラムだけでも、かっこよすぎて泣けます。ロックが持つダイナミズムや興奮が、すごい濃度に凝縮された1曲だと思います。

 ボーカルというか、声は入っていますが、いわゆる歌モノではなく、あくまで楽器の一部のような使われ方。一般的なロックやポップスとは、全く違う声の使い方も、ポストロック的と言えるかもしれません。

Gastr Del Sol “Camoufleur” 1998

 デイヴィッド・グラブスとジム・オルークという鬼才2人が揃ったグループ、ガスター・デル・ソルのラスト・アルバム。

 先にご紹介した3枚とは、ちょっと毛色の違う1作です。アコースティック・ギターが使用され、全曲ではないですが、ボーカルも入ったこのアルバム。一言であらわすと「変なフォーク」です。

 フォークやカントリーのような音を用いて、どこかの民謡のような牧歌的な雰囲気もあるのに、とにかく違和感があふれる作品です。ただ、その違和感が嫌かというと、そういうわけでもなくて、全体はどこまでもポップ。

 やがて、違和感がクセになってきたら、あなたもいよいよポストロック的な耳を持ち始めたということだと思います。デイヴィッド・グラブスとジム・オルークは、このグループ以外にも、ソロ作品をはじめ多数のリリースがあります。

 このアルバムが気に入ったら、ドラッグ・シティ(Drag City)というシカゴのレーベルから出ている、それぞれのソロ作品がおすすめ。ものすごく実験的な作品もあるので、聴く前にリサーチした方がいいかもしれません。当サイトにも、何枚か彼らの作品のレビューを掲載しています。

 

The Album Leaf “In A Safe Place” 2004

 ポストロック・バンド、トリステザ(Tristeza)のメンバーだったジミー・ラヴェルが同バンド脱退後に始めたソロプロジェクト、アルバム・リーフの3rdアルバム。

 この作品も、ここまでの4枚とは雰囲気が違い、サウンドの響きを最優先したような、音響を全面に押し出した1枚です。

 ピアノやアコースティック・ギターのような生楽器と、電子音がともに使われていますが、双方が溶け合って、優しく響きます。部屋に染み渡っていくような、浸透力と暖かみを持ったサウンド・プロダクション。

 アルバム・リーフは、作品によって少し音楽性が変わりますが、どれも音の響きを大切にしている点では共通しています。ジミー・ラヴェルが在籍していたトリステザは、よりバンドのアンサンブルを重視している印象ですが、音自体はアルバム・リーフに近いです。

 本作には、アイスランドのポストロック・バンド、シガー・ロスのメンバーが参加しています。このアルバムが気に入ったなら、シガー・ロスも気に入るかもしれません。彼らはアルバムによって音楽性が大きく異なるので、注意してください。

 

終わりに

 自分の好きなアルバム、ぜひとも多くの方に聴いていただきたいアルバムの中から、アメリカのポストロックをある程度把握できる5枚を選んだつもりです。

 「ポストロックは敷居が高い」「ポストロックはつまらない」という先入観を持っている方も、少しでも興味をお持ちいただけたなら、聴いてみてください!





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