Pianos Become The Teeth “Keep You” / ピアノズ・ビカム・ザ・ティース『キープ・ユー』


Pianos Become The Teeth “Keep You”

ピアノズ・ビカム・ザ・ティース 『キープ・ユー』
発売: 2014年10月24日
レーベル: Epitaph (エピタフ)
プロデューサー: Will Yip (ウィル・イップ)

 メリーランド州ボルティモアで結成されたバンド、ピアノズ・ビカム・ザ・ティースの3rdアルバム。

 1stと2ndはマサチューセッツ州発のインディーズ・レーベル、トップシェルフ(Topshelf)からのリリースでしたが、本作からパンク系の名門レーベル、エピタフへと移籍しています。

 エピタフというと、僕はどうしてもパンクやメロコアをイメージしてしまいます。実際、ピアノズ・ビカム・ザ・ティースの音楽性も、エピタフ移籍前の2作は、シャウト気味のボーカルと、疾走感あふれるアンサンブルを特徴とした、スクリーモ色の強いもの。

 しかし、エピタフ移籍1作目となる本作『Keep You』は、叙情性が強く、ポストロック的なアプローチを多分に含んだ1作となっています。

 具体的には、メロディーはシングアロングが起こるような、メジャーキーの突き抜けた明るさではなく、メロウでじっくりと聴かせるような音の動き。テンポも抑えめで、ボーカルもシャウトは使わず、音と言葉を丁寧に紡いでいきます。

 バンドの音作りも、激しく歪んだサウンドは控えめ。ギターはクリーントーンを多用し、各楽器が有機的に絡み合う、ポストロック的アンサンブルを展開しています。

 例えば1曲目の「Ripple Water Shine」では、左右両チャンネルから、それぞれギターの流れるようなフレーズが溢れ出し、絡み合いながらアンサンブルを構成していきます。リズム隊も、随所に引っかかるようなタイミングを挟みながら、立体的にリズムを刻み、バンド全体が生き物のように躍動する1曲。

 3曲目「Lesions」では、ドラムのバウンドするリズムに、ベースとドラムの波のようなフレーズが重なり、レイヤー状に厚みのあるアンサンブルを組み上げていきます。

 8曲目「Traces」では、ドラムの小刻みなリズムに、透明感のある音色のギターが、絡みつくようにフレーズを紡ぎ、ゆるやかな躍動感のある演奏を展開。

 アルバム全体をとおして、前述したとおりディストーションもシャウトも少なく、おだやかなサウンドが主軸。でも、アンサンブルには躍動感があり、ボーカルからも心に秘めたエモーションがじわじわと滲み出す、熱を帯びたアルバムです。

 これまでのスクリーモ要素の強いピアノズ・ビカム・ザ・ティースを期待した人にとっては、少々肩透かしかもしれません。僕もエピタフ移籍と聞いたときから、勝手に今まで以上に音圧と疾走感が増していると思いましたし(笑)

 ただ、これまでもスクリーモやエモ色が濃かったとはいえ、ポスト・ハードコア的な複雑性や、メロウなフレーズも併せ持っていたため、納得できる変化とも言えるでしょう。




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