Dead Kennedys “Fresh Fruit For Rotting Vegetables” / デッド・ケネディーズ『暗殺』


Dead Kennedys “Fresh Fruit For Rotting Vegetables”

デッド・ケネディーズ 『暗殺』
発売: 1980年9月2日
レーベル: Alternative Tentacles (オルタナティヴ・テンタクルズ), Cherry Red (チェリーレッド)

 カリフォルニア州サンフランシスコのパンク・バンド、デッド・ケネディーズのデビュー・アルバムです。最初はイギリスのCherry Redレーベルから発売され、その後メンバーのジェロ・ビアフラが設立したレーベル、Alternative Tentaclesからもリリースされています。

 英語のアルバム・タイトルは『Fresh Fruit For Rotting Vegetables』ですが、日本盤には『暗殺』という邦題がつけられていました。

 現代的なハイファイ・サウンドと比較すれば、やや奥まった印象のあるサウンドですが、そんなことは気にならなくなるほど、初期衝動で突っ走るアルバムです。あまりアンサンブルがどうこうとか、サウンド・プロダクションがどうこうとか言うアルバムではなく、エモーションと疾走感が溢れた1作。

 テンポが速いことに加えて、バンド全体が塊になって迫ってくるような一体感があります。また、直線的に突っ走るだけではなく、演奏には確かな技術力も感じられるバンドです。

 1曲目は「Kill The Poor」。「ボーカルの声が唯一無二」と言われることが多いこのバンド、確かにやや演説っぽいというべきなのか、絶妙にビブラートがかかり、聴き手をアジテートするような魅力のある声です。ハイテンポではないものの、各楽器のプレイには随所に推進力となるようなフックがあり、アンサンブルも機能的にまとまった1曲だと思います。

 2曲目「Forward To Death」は、1分20秒ほどの長さの、疾走感あふれる1曲。と言っても、このアルバムに収録の14曲中6曲は2分未満です。イントロからドラムがリズムを刻み、ギターとベースが追いかけっこをするように走り抜け、聴き手をハイテンポな曲に引きずり込んでいきます。

 7曲目「Chemical Warfare」は、再生時間1:56あたりで3拍子に切り替わる部分にも意外性があります。当該部分のユーモアたっぷりのボーカルの歌い方もアクセント。曲のラストはカオスになってから、カウントを取り直してきっちり終わるなど、展開が多彩。

 8曲目の「California Über Alles」は、イントロから、立体的なドラムが響きわたり、ギターとベースも鋭くリズムを刻んでいきます。声の奥からビブラートをかけたようなボーカルも印象的。

 勢いを重視した、疾走感あふれるアンサンブルが展開される1作です。しかし、前述したとおり、全て8ビートの直線的な曲が続くわけではなく、演奏力の高さをうかがわせます。

 また、ロカビリーやカントリー、ロックンロールなど、彼らのルーツと思われる音楽の要素も隠すことなく感じられ、パンク一辺倒ではない多彩さもある作品です。ボーカルの声も魅力的。リスナーの背中を押すような、アジテートするような空気を持った声です。

 現代的な音圧高め、レンジ広め、輪郭くっきりのサウンドから比較すると、音圧不足でモヤっとしたサウンドと感じる方もいるかもしれません。しかし、そんな意識を吹き飛ばすぐらいの気合いと勢いの充満したアルバムです。