目次
・用語の意味
・USインディーにおけるファンジン
・主要なファンジン
用語の意味
ファンジン(fanzine)とは、「ファン(fan)」と、マガジン(magazine)の「ジン」が、くっついてできた言葉。
その名のとおり、ファンによって執筆・運営される、特定の話題に特化した雑誌のことです。基本的には、ノンプロフェッショナルかつ非公式。
日本でもそのまま「ファンジン」と使いますが、より馴染みのある言葉を使うなら、ファンが作る一種の同人誌と言った方が、イメージしやすいでしょうか。
音楽にのみ使う言葉ではなく、SF小説やテレビゲームなど、様々なジャンルのファンジンが存在します。
USインディーにおけるファンジン
アメリカのインディーロック文化において、ファンジンは非常に大きな役割を担ってきました。
大手のレコード会社やテレビ局とは違い、販売網や広告手段に乏しいインディーズ・レーベルおよびバンド。
そのため、現在のようにインターネットが普及する前、ファンジンはカレッジラジオと並び、主要な広告手段だったのです。
ファンジンからスタートし、その後レーベルへと発展した例もあります。ニルヴァーナを輩出したことで知られる、サブ・ポップもそのひとつ。
また、日本で言えば『rockin’on』(ロッキング・オン)誌のように、同人誌としてスタートしながら、大きな雑誌へと発展する例もあります。
1970年代後半あたりから、メジャーレーベルとは契約できない、あるいはそもそもメジャーを目指さない音楽の受け皿として、各地でインディーズ・レーベルの設立が増加。
それと比例して、各地でジャンルや地域性に特化したファンジンが誕生します。
やがて、インターネットをはじめとした通信網の発達により、徐々にファンジンが担った役割はウェブサイトへと移行しますが、初期のインディーロック文化醸成を助けたことは間違いありません。
主要なファンジン
時間軸に沿って、いくつかのファンジンをご紹介しましょう。
まず、パンクのファンジンとして、共にロサンゼルスで1977年に創刊された、スラッシュ(Slash)とフリップサイド(Flipside)。前者は1980年、後者は2000年まで、発行を続けました。
のちにリサーチ(RE/Search)へと発展する、サーチ&デストロイ(Search & Destroy)がサンフランシスコで創刊したのも1977年。
1982年に、同じくサンフランシスコで始まったマキシマムロックンロール(Maximumrocknroll)も、パンクとハードコアに特化したファンジンです。
オハイオ州クリーヴランドを拠点にするオルタナティヴ・プレス(Alternative Press)は、1985年に創刊。
パンクのファンジンとしてスタートした同誌ですが、90年代に入ると、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(Red Hot Chili Peppers)や、サウンドガーデン(Soundgarden)を、世界的なブレイクに先駆けて表紙に起用。雑誌として大きく飛躍します。
パンク・プラネット(Punk Planet)は、イリノイ州シカゴで1994年に創刊。その名のとおり、主に扱うのはパンクですが、時としてフェミニズムや労働問題も扱うなど、批評精神に満ちたファンジンです。