「アルバム」というフォーマットの魅力


目次
イントロダクション
ひとつの作品としてのアルバム
コンセプト・アルバム
 ーThe Beatles 『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』
 ーDavid Bowie 『Ziggy Stardust』
 ーQueen 『A Night at the Opera』
 ーASIAN KUNG-FU GENERATION 『サーフ ブンガク カマクラ』
まとめ

イントロダクション

 音楽をコアに好きな人と、そうでもない人との温度差の違いのひとつに、アルバムの捉え方があります。

 「アルバムって曲が十数曲まとまってるだけじゃないの?」という方もいらっしゃるかもしれませんが、それだけじゃないんです。

 アルバムはひとつの作品であり、流れやコンセプトを意識すると、より深く楽しめるもの。

 この記事では、アルバム単位で音楽を聴く楽しさを、ご紹介します。

ひとつの作品としてのアルバム

 アルバムの魅力は、なんといっても作品としての情報量の多さ。

 単純にシングルよりも曲数が多いだけではなく、ジャケット、曲順、コンセプトなど、ひとつの作品として多角的に楽しめる内容になっているんです。

 もちろん、そんな思考を持たず「曲が貯まってきたからアルバムにしよう」って感じで、ただ曲数を揃えただけのアルバムを作るバンドやシンガーもいます。

 ただ、多くの人気バンド、特に歴史に名を残すようなバンドは、優れたアルバムを送り出していることも事実。

 有名バンドの名盤と呼ばれるアルバムは、アルバム単位で聴くべき作品であると言っていいでしょう。

 例えば10曲入りのアルバムがあるとして、1曲目がイントロ的な役割、2曲目がスピード感ある楽曲、3曲目から5曲目まではしっとりとしたミドル・テンポというように、流れや役割を意識して聴くと、1曲単位にはない奥行きが感じられるんです。

 それと、CDやデジタル配信が生まれる以前の、レコード時代のアルバムを聴く際の注意。レコードはA面とB面があり、A面の再生が終わると、レコードを裏返してB面を再生します。

 すなわち、A面とB面の間には自ずとインターバルが生まれるわけで、当時の作品はこの切り替え時間を、考慮した構成になっているんです。

 なので、A面の最後の曲でやや落ちつき、B面の最初の曲がリード・トラック。というような構成のアルバムが少なくありません。

 もともとはレコードで発売されていた70年代の名盤でも、CDやストリーミングをとおして聴くならば、A面とB面の切れ目は存在しません。

 そのため、アルバムによっては繋がりに違和感があるかもしれませんが、そんな時にはレコードのA面とB面を思い出してみてください。

 面の切れ目を意識することで、アルバムをより深く楽しむヒントとなるかもしれません。

コンセプト・アルバム

 アルバム作品の魅力を伝える、わかりやすい例として、「コンセプト・アルバム」を挙げておきましょう。

 「コンセプト・アルバム」あるいは「トータル・アルバム」とは、その名のとおり、確固としたコンセプトを持ったアルバムのこと。

 …と言っだだけでは、ほとんど説明になっていませんから、具体的に何枚かのアルバムをご紹介します。

The Beatles 『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』
 まずはビートルズの『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』。

 

 この作品は、1967年にリリースされたビートルズの8thアルバム。「世界初のコンセプト・アルバム」とも呼ばれ、ロックを代表する名盤の1枚と言っても、過言ではありません。

 内容は、アルバム・タイトルにもなっている「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」という架空のバンドのライブを収めたというもの。

 そのため、1曲目のイントロにはガヤガヤした客の声も収録され、ラストはアンコールの「A Day In The Life」で、締め括られます。

 もちろんライブ録音ではなく、スタジオ録音。前述の客席の声など、趣向を凝らした演出にも、驚かざるをえません。

 デジタル録音のない1967年に、どうしてこんなアルバムを作ることができたんだろう。

David Bowie 『Ziggy Stardust』
 2枚目に紹介するのは、デヴィッド・ボウイの『ジギー・スターダスト』。

 1972年にリリースされた5thアルバムで、正式タイトルは『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』と、かなり長め。

 

 資源の枯渇によって、5年後に迫る人類の滅亡。そこに救世主を名乗るジギーが、バックバンドのスパイダーズ・フロム・マーズを引き連れ、異星から舞い降りる、というストーリー。

 あと5年で世界が終わることに、絶望した人々が描かれる「Five Years」から始まり、ジギーがスーパースターとして成功、そして没落し、ラストは「Rock’N’Roll Suicide」(邦題:ロックン・ロールの自殺者)で締められる、物語性の高いアルバムです。

 実にコンセプト・アルバムらしい、コンセプト・アルバム。

Queen 『A Night at the Opera』
 3枚目は、クイーンの『A Night at the Opera』。『オペラ座の夜』という邦題がついています。

 

 1975年にリリースされた、クイーンの4thアルバム。ジャケットをプログラムに見たて、アルバム・タイトルのとおり、オペラを再現するかのような、壮大なロックを展開しています。

 ラストに収録されるのは、イギリス国歌の「God Save the Queen」。これはオペラや劇場で、終演時にその国の国歌を演奏することに由来しています。

 彼らの代表曲「Bohemian Rhapsody」(ボヘミアン・ラプソディ)も収録。

ASIAN KUNG-FU GENERATION 『サーフ ブンガク カマクラ』
 最後に邦楽のアルバムも、1枚ご紹介しておきましょう。

 2008年にリリースされた、ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジアン・カンフー・ジェネレーション)の5thアルバム『サーフ ブンガク カマクラ』です。

 

 「藤沢ルーザー」「江ノ島エスカー」「由比ヶ浜カイト」など、収録曲にはすべて、江ノ島電鉄の駅名が含まれています。

 一貫したストーリーがあるわけではありませんが、江ノ電の沿線風景が目に浮かぶような統一感があり、まるで短編小説集のようなアルバム。

まとめ

 以上、僕なりに「アルバム」の魅力を記述してきました。

 今やCDよりも、サブスクリプションによるストリーミングが主流ですし、楽曲単位の視聴が増えていくのかもしれません。

 でも「アルバム」という作品が持つ魅力、アルバム単位で聴くことで広がる音楽の楽しみが、必ずあります。

 この記事で、少しでもアルバムの魅力をお伝えすることができたなら幸いです。

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