Animal Collective “Here Comes The Indian” / アニマル・コレクティヴ『ヒア・カムズ・ジ・インディアン』


Animal Collective “Here Comes The Indian”

アニマル・コレクティヴ 『ヒア・カムズ・ジ・インディアン』
発売: 2003年6月17日
レーベル: Paw Tracks (ポウ・トラックス)

 メリーランド州ボルティモアで結成されたバンド、アニマル・コレクティヴの1stアルバム。これ以前にも、別名義で3枚のアルバムを発表しているため、実質的に4枚目と数えることもあります。

 また、メンバーのエイヴィ・テア(Avey Tare)が設立したレーベル、Paw Tracksの記念すべきカタログ・ナンバー1番(PAW1)の作品でもあります。

 実験的なサウンドとアレンジを多分に含みながら、カラフルでポップな作品を作り上げるアニマル・コレクティヴ。前述したとおり、本作『Here Comes The Indian』は、アニマル・コレクティヴ名義としては1枚目のアルバムです。

 ノイズとしか思えない音や、アヴァンギャルドな展開も含みながら、全体としてはポップな作品に仕立て上げる、抜群のセンスとバランス感覚を持ったバンドです。本作も、アヴァンギャルドな香りを振りまきながら、騒がしくも楽しい、いきいきとした音楽を鳴らしています。

 1曲目「Native Belle」は、冒頭から雑多な音が飛び交うなか、再生時間1:07あたりから突然バンドの演奏がスタート。ノイズやシャウトなど、ポップとは思えぬ音が四方八方から飛んできますが、そんなことは気にならないぐらいの、圧倒的な躍動感にあふれたアンサンブルが展開されます。

 2曲目「Hey Light」は、展開が目まぐるしい1曲。イントロから叩きつけるようなパワフルなドラムが、定期的に躍動感を響かせ、電子音やギターや声が、次々に重なっていく展開。かなり音が込み入っていますし、ノイズとしか思えないサウンドも入っていますが、それをねじ伏せるほどにアンサンブルの躍動感が圧倒的。

 再生時間3:14あたりからは、ハンドクラップと儀式で歌われるような合唱が始まり、トライバルな雰囲気へ。キャンプファイヤー…というより開拓時代の野外で、焚き火を囲んで歌う曲のようにも聞こえます。ただ、こうした展開に無理やり感が全くなく、「ちょっと変わったポップ・ソング」ぐらいのノリで聴かせてしまうのが、アニマル・コレクティヴの特異なところ。

 4曲目の「Panic」は、声と様々な持続音、打ちつけるドラムの音が重なる、音響的なアプローチの1曲。

 7曲目「Too Soon」は、打ちつける激しいドラム、エフェクトのかかった声、種々の電子音やノイズが飛びかい、絡み合う、アヴァンギャルドな1曲。再生時間1:50から始まる、激しいドラミングが鮮烈。

 アルバムを通して、かなり実験的なアプローチが目立つ作品なのですが、不思議と敷居が高い印象を与えません。それは、ノイジーなサウンドや、複雑怪奇なアレンジを上回るほどの、躍動感や全体の調和といった、音楽の魅力が前景化しているためだと思います。

 アルバムによって作風が異なり、各メンバーのソロ活動にも積極的なアニマル・コレクティヴですが、本作も彼らの音楽的語彙の豊富さ、ポップ・センスの高さを見せつけられる1作です。