Ryley Walker “Primrose Green” / ライリー・ウォーカー『プリムローズ・グリーン』


Ryley Walker “Primrose Green”

ライリー・ウォーカー 『プリムローズ・グリーン』
発売: 2015年3月31日
レーベル: Dead Oceans (デッド・オーシャンズ)

 イリノイ州ロックフォード出身のシンガーソングライターでありギタリスト、ライリー・ウォーカーの2ndアルバム。

 前作『All Kinds Of You』は、フィンガースタイル・ギターなどを扱うレーベル、トンプキンス・スクエア(Tompkins Square)からのリリースでしたが、本作はインディアナ州ブルーミントンを拠点とするレーベル、デッド・オーシャンズからのリリース。

 前述したとおり、トンプキンス・スクエアからリリースされた前作は、ライリー・ウォーカーのフィンガースタイル・ギターが前面に出た、同レーベルの色にもぴったりのアルバムでした。よりインディー・ロック色の濃いデッド・オーシャンズへと、レーベルを移籍してリリースされた本作。ライリー自身のギターが中心にあるのは前作と共通していますが、多くのミュージシャンを迎え、多彩なアンサンブルが展開される1作となっています。

 1曲目の「Primrose Green」では、流れるようなアコースティック・ギターのイントロに導かれ、そこに絡みついていくようにピアノやドラムが加わり、ゆるやかに躍動する演奏が展開。再生時間2:43あたりからの間奏では、ギターとピアノが高度なコミュニケーションを楽しむように、ダイナミックで、いきいきとしたアンサンブルを繰り広げます。

 2曲目「Summer Dress」は、ジャズを思わせるポリリズミックなドラムを中心に、スウィング感の溢れる演奏が展開する1曲。リズム隊とヴィブラフォンはリズムも音色もジャズ的ですが、ギターとボーカルはカントリー的。牧歌的なのに、同時にスリリングな躍動感と緊張感を、持ち合わせています。

 5曲目「Love Can Be Cruel」は、イントロから各楽器のリズムが立体的に絡み合い、グルーヴ感を生んでいく、有機的で肉体的なアンサンブルの1曲。エレクトリック・マイルスの香りも漂います。

 6曲目「On The Banks Of The Old Kishwaukee」は、ゆったりと散歩をするようなリズムとテンポが心地いい、牧歌的なカントリー・ソング。

 7曲目「Sweet Satisfaction」は、アコースティック・ギターをはじめとしたフォーキーな音色に、エレキ・ギターのオルタナティヴなサウンドが溶け合う1曲。イントロから、カントリー色の濃いサウンドで、ゆるやかに躍動するアンサンブルが展開。しかし、再生時間1:43あたりから入ってくる、ざらついた歪みのギターなど、徐々にオルタナティヴなサウンドやアレンジが加わっていきます。再生時間4:20あたりからの、疾走感に溢れた展開も秀逸。エモーショナルなボーカルも、カントリーとオルタナティヴ・ロックの要素を併せ持ち、楽曲を多彩にしています。

 ライリー・ウォーカーのギターを中心とした、有機的で躍動感の溢れるアンサンブルが堪能できるアルバムです。カントリーやフォークが下敷きにあるのは事実ですが、エレキ・ギターの過激な音色や、ピアノのフリーな演奏などが随所に散りばめられ、現代的な空気も持ち合わせています。

 また、楽曲によっては、ジャズの要素も色濃く出ています。クレジットを確認すると、チェロのフレッド・ロンバーグ・ホルム(Fredrick Lonberg-Holm)、ベースのアントン・ハトウィッチ(Anton Hatwich)、ドラムのフランク・ロザリー(Frank Rosaly)ら、シカゴを拠点にするジャズ・ミュージシャンが複数参加。彼らのプレイが、このアルバムにジャズ色と、さらなる奥行きを加えているのでしょう。

 前作と比較すると、バンド感とインディー・ロック感の強まった1作、と言っていいでしょう。前述したとおり、トンプキンス・スクエアからデッド・オーシャンズへとレーベルを移籍していますが、それぞれのレーベルのイメージが、それぞれのアルバムにそのまま反映されていると言っても、良いかと思います。