Archer Prewitt “Wilderness”
アーチャー・プレヴィット 『ウィルダーネス』
発売: 2005年1月25日
レーベル: Thrill Jockey (スリル・ジョッキー)
ザ・シー・アンド・ケイク(The Sea And Cake)のギタリストとしても知られる、アーチャー・プレヴィット4枚目のソロ作。様々な楽器を導入し、カラフルでにぎやかな音とアンサンブルで溢れていた、前作『Three』。それと比較すると、今作はより歌にフォーカスし、シンプルな音が響きます。
前作『Three』も、各楽器がナチュラルで混じり気のないサウンドを持っていましたが、今作はアコースティック・ギターを中心に据えて楽器の数を絞った分、さらにオーガニックな印象が増しています。また、アルバム全体が帯びる雰囲気としても、フォーク色が濃くなっています。メロディーも前作より哀愁を感じるものが多く、歌が前景化されています。
アコースティック・ギターを中心としながら、弾き語りのようなアレンジではなく、ゆるやかにバンド全体が躍動するような、グルーヴ感のある1枚でもあります。
2曲目「Leaders」では、早速アコギ、ベース、ドラムが、わずかにスウィングする心地いいアンサンブルを展開。ドラムの絶妙なタメと、ボーカルのメロディーとの関係性も、音楽のフックになっています。
7曲目「Think Again」には、ヴィブラフォンが使用され、アコースティック・ギターとのサウンドの溶け合いが心地いい1曲。
9曲目「O, Lord」は、アコギを中心にゆったりとしたイントロから始まり、再生時間0:30あたりから突然ドラムが連打で入ってきます。フォーキーなサウンドながら、静と動のコントラストが鮮烈。
前述したように、前作『Three』はカラフルでポップなアルバムでしたが、今作『Wilderness』はそれと比較すると、よりルーツ・ミュージックの香り漂う作品です。前作が7色のアルバムだとすると、今作はジャケットのデザインに近い、アイヴォリーや薄い茶色のイメージ。
しかし、今作は地味で退屈なアルバムかというと、そんなことは全くなく、アコースティック・ギターの響きだけでも多彩で、グルーヴ感も持った作品です。歌の強さという意味でも、今作の方が表現に深みがあると思います。あとは好みの問題ですが、僕個人は前作『Three』の方が好きですね。