Azeda Booth “In Flesh Tones” / アゼダ・ブース『イン・フレッシュ・トーンズ』


Azeda Booth “In Flesh Tones”

アゼダ・ブース 『イン・フレッシュ・トーンズ』
発売: 2008年9月28日
レーベル: Absolutely Kosher (アブソリュートリー・コーシャー)

 カナダのエクスペリメンタル・ポップ・バンド、Azeda Boothの1stアルバムであり、唯一のアルバム。カリフォルニア州エメリーヴィルのレーベル、Absolutely Kosherからのリリース。

 輪郭のぼやけた、ふんわりした電子音を多用した、エレクトロニカに近いサウンドを持ったアルバムです。ボーカルも、ささやき系の女声で、柔らかいバックの音色とのバランスが抜群に良い。

 しかし、音響に特化した作品なのかというとそうでもなく、生き生きとした躍動感や、テクノ的なビートも顔を見せる1作です。

 1曲目の「Ram」は、イントロからアンビエントな電子音が響きますが、再生時間0:17あたりでドラムが入ってくると、途端に躍動感が生まれます。

 2曲目の「In Red」は、ドラムの立体的な音に、臨場感がある1曲。各楽器が絡み合いながら網の目のように音楽を織り上げるなか、ウィスパー系のボーカルが自由に漂うようにメロディーを紡いでいきます。電子音を中心にしたサウンドですが、暖かみのあるサウンドで、母親の胎内にいるような気分になります。

 3曲目は「First Little Britches」。こちらも電子音らしい音色で出来上がった1曲。切り刻まれ再構築されたようなリズムの中から、徐々にグルーヴが生まれる展開がスリリング。

 4曲目の「John Cleese」は、さらにビートが前景化された1曲。オウテカを感じさせるリズムとサウンド・プロダクションです。ただ、ボーカルが入っているため、ビートのあるヒーリング・ミュージックのようにも聞こえます。

 5曲目の「Lobster Quadrille」も、複雑なリズムを持った1曲。やや不穏な空気の電子音が、緊張感と不安感を醸し出します。

 6曲目の「East Village」は、イントロから電子音が心地よく持続します。再生時間0:45あたりで高音が入ってくるところで、虚をつかれてちょっとビックリしました(笑)

 10曲目の「Kensington」では、ヴィブラフォンのようなマレット系の打楽器のような音が心地よく響きます。イントロから複数の楽器が8分音符でリズムを刻み続けるんですが、この重層的なサウンドも心地いい。4分弱の曲ですが、展開が多く、情報量の多さを感じる1曲。再生時間1:20あたりから盛り上がるところもかっこいいし、これは名曲だと思います。

 ほとんど予備知識なしに聴いたアルバムですが、思いのほか良い作品でした。最初にも書いた通り、歌の入ったエレクトロニカといった感じですが、ビートが強く、いきいきと躍動感が溢れる曲もあります。