Sufjan Stevens “Greetings From Michigan The Great Lake State” / スフィアン・スティーヴンス『ミシガン』


Sufjan Stevens “Greetings From Michigan The Great Lake State”

スフィアン・スティーヴンス 『ミシガン』
発売: 2003年7月1日
レーベル: Asthmatic Kitty (アズマティック・キティ)

 ミシガン州デトロイト出身のシンガーソングライター、スフィアン・スティーヴンスの3枚目のスタジオ・アルバム。タイトルは『Michigan』とのみ表記されることもあります。

 「50州プロジェクト」(The Fifty States Project)と称して、アメリカ50州それぞれをコンセプトにしたアルバムを制作すると宣言したスフィアン・スティーヴンス。本作『Greetings From Michigan The Great Lake State』は、50州プロジェクトの記念すべき1作目であり、彼の故郷であるミシガン州をテーマにしたアルバムです。(結果的には、2枚のアルバムのみリリースし、終了してしまうプロジェクトなのですが…)

 アコースティック・ギターを中心にした、フォーキーなサウンドを基本としながら、多種多様な楽器の音が色合いをプラスし、実験的なアレンジも忍ばせた、インディーらしい音楽が展開されます。非常に優れたポップ・センスで完成された1枚。

 また、スフィアンはマルチ・インストゥルメンタリスト(マルチプレイヤー)としても知られ、本作でもギター、ベース、ピアノ、バンジョー、オーボエ、フルートなど、実に多種におよぶ楽器を操っています。

 1曲目「Flint (For The Unemployed And Underpaid)」は、ピアノとボーカルの染み入るような1曲。間奏を彩るトランペットの音色が、曲に広がりをもたらしています。

 2曲目「All Good Naysayers, Speak Up! Or Forever Hold Your Peace!」は、音数はそこまで詰め込まれていないのに、イントロから各楽器が、折り重なるように立体的なアンサンブルを構成する1曲。ヴィブラフォンの音色が心地いい。

 3曲目「For The Widows In Paradise, For The Fatherless In Ypsilanti」は、バンジョーを使ったノスタルジックな雰囲気。しかし、カントリー1色の曲というわけではなく、再生時間2:03あたりからホーンが入ってくる部分では、多層的にロングトーンが重なる、音響的なアプローチも感じられます。

 8曲目「Detroit, Lift Up Your Weary Head! (Rebuild! Restore! Reconsider!)」は、イントロから多種多様な楽器が用いられ、カラフルでキュートなアンサンブルが繰り広げられる1曲。非常にポップで楽しい曲ですが、アンサンブルと展開には緻密さが溢れ、聴きごたえもあります。

 アルバム全体を通して、バラエティに富んだ楽曲が揃った作品です。フォークやカントリーをはじめ、クラシックやインディ-・ロックなど様々なジャンルの音楽が混じり合い、極上のポップ・ミュージックに結実しています。

 スフィアン・スティーヴンスという人のたぐいまれな才能、ポップセンスが溢れた1作。