Isotope 217 “Utonian Automatic” / アイソトープ217『ユートニアン・オートマティック』


Isotope 217 “Utonian Automatic”

アイソトープ217 『ユートニアン・オートマティック』
発売: 1999年8月10日
レーベル: Thrill Jockey (スリル・ジョッキー)

 シカゴのポストロック・バンド、トータス周辺のメンバーが結成したジャズ・バンド、アイソトープ217の2ndアルバムです。

 前作『The Unstable Molecule』を単純化して説明するなら、ジャズのフレーズやサウンドを、ポストロック的な手法で再構築したアルバムでした。2作目となる本作は、矛盾するようですが、ジャズ色とポストロック色の両方が、より色濃くあらわれた作品です。

 どういうことかと言うと、前作ではあまり聴かれなかった、ダンス・ミュージックとしてのジャズのスウィング感が強まり、同時にポストロック的な、サウンドを切り貼りしコラージュする手法も、より強く出たアルバムということです。

 1曲目「LUH」のイントロからエンジン全開! 個人的に大好きな1曲です。1音目が鳴った瞬間から、かっこいい。エレクトリック期のマイルスの香りも漂いますが、リズム構造はよりわかりやすく、ロック的なノリでも聴ける1曲だと思います。前半は様々なサウンドとリズムが折り重なっていく、怒濤の展開。

 再生時間2:42あたりからは、嵐が過ぎ去ったあとのように、突如としてアンビエントな音像へ。そこから再び音が増えていく後半。後半はポストプロダクションを強く感じさせるサウンド。

 3曲目の「New Beyond」は、低音に重心を置いた、録音された音全体にエフェクトがかけられたような、不思議なサウンド・プロダクションを持つ1曲。

 4曲目「Rest For The Wicked」は、ワウとディレイのかかったギターらしき音が漂うイントロから、ベースとドラムがリズムを重ねていく展開。2分ちょっとの短い曲ですが、リズム隊からはジャズが香り、上モノからはエレクトロニカや音響系ポストロックが香る、このバンドらしい1曲。

 5曲目「Looking After Life On Mars」は、ノリノリで抜群のグルーヴ感。1曲目「LUH」に続いて、非常にわかりやすいかっこよさの1曲です。8分を超える曲で、再生時間5:40ぐらいまではジャズの要素が濃い、躍動感あふれる演奏が繰り広げられます。

 後半は、それまでのフレーズをサンプリングして再構築した、ミニマル・テクノのような展開。このバンドが持つ魅力と音楽性のレンジの広さが、凝縮された1曲だと思います。

 ジャズとポストロック、それぞれの要素が前作よりも色濃く、バンドとしての洗練を感じさせるアルバムです。ジャズ的なグルーヴ、音響的な心地よさなど、多面的な魅力があふれる1枚。

 これは心からオススメしたい作品です!