Isotope 217 “Who Stole The I Walkman?”
アイソトープ217 『フー・ストール・ジ・アイ・ウォークマン?』
発売: 2000年8月8日
レーベル: Thrill Jockey (スリル・ジョッキー)
シカゴのポストロック・バンド、トータス周辺のメンバーが結成したジャズ・バンド、アイソトープ217の3rdアルバム。
これまでの2作で、ジャズとポストロックの融合を推し進めてきたアイソトープ217。本作『Who Stole The I Walkman?』でも、その方法論は基本的には変わっていません。
彼らはジャズの要素をポストロック的な手法で、解体・再構築してきました。今作は、最もポストロック色の強い1作と言えます。
ジャズのフレーズやリズムを、パーツとしてポスト・プロダクション的に組み立て直した1作目『The Unstable Molecule』。ジャズのグルーヴ感やダイナミズムと、音響的なアプローチが高度に融合した2作目『Utonian Automatic』。
そして、3作目の本作は、もはやジャズとポストロックを、細切れに解体して再生された、全く新しい音楽を作りあげています。
1曲目「Harm-O-Lodge」から、多種多様なサウンドとリズムが飛び交う、ジャンルレスで不思議な音楽が展開していきます。再生時間0:55あたりで、別の音源を切り貼りしたように、雰囲気が一変するところも新鮮。というより、実際にかなり大胆なポスト・プロダクションが施されているのだろうと思います。
3曲目「Meta Bass」は、音の素材がそのまま漂うようなアンビエントな1曲。音響が前景化された曲であることは確かですが、徐々にビート感とグルーヴ感が生まれていきます。音響とアンサンブルが、不可分に融合したような感覚。
7曲目「Moot Ang」は、ギターやトランペットのフレーズ、ドラムのリズムが、かみ合わないようでかみ合っていく展開。いわゆるポリリズムとは異なりますが、いくつものパーツから、有機的に新しい音楽が生まれていくような1曲。
前述したとおり、アイソトープ217のアルバムの中で、最も斬新でジャンルレスな音楽が展開される1作です。前2作と比較すると、ある程度の難解さはあるかなぁ、とは思います。
しかし、既存の音楽ジャンルを刷新する、ポストロックやポストジャズの一種として、とても刺激的な作品です。トータスが好きな方や、普段ポストロックを聴いている方には、違和感なく受け入れられる作品であると思います。