Neutral Milk Hotel “On Avery Island”
ニュートラル・ミルク・ホテル 『オン・アヴェリー・アイランド』
発売: 1996年3月26日
レーベル: Merge (マージ)
プロデュース: Robert Schneider (ロバート・シュナイダー)
フロントマンのジェフ・マンガム(Jeff Mangum)を中心に、ルイジアナ州ラストンで結成されたバンド、ニュートラル・ミルク・ホテルの1stアルバムです。アメリカ国内ではMerge、イギリスではFire Recordsからのリリース。
エフェクターを深くかけたギターの音色が、アルバム全体をジャンクかつサイケデリックな雰囲気で包む1作です。ギター以外にも、耳に引っかかる奇妙なサウンドが満載。しかし、アヴァンギャルな空気が前面に出るわけではなく、歌のメロディーは親しみやすく、ポップな音楽として成立しています。
1曲目は「Song Against Sex」。イントロから早速、電子ノイズのような音が響きわたり、その後のギターもざらついた耳ざわり。楽曲的にはガレージ風味のあるシンプルなロックですが、ボーカルの声とメロディーは垢抜けていてポップな雰囲気をプラス。
2曲目の「You’ve Passed」も、倍音たっぷりの歪んだギターが、ゆったりと空間を埋めていく1曲。ややテンポがゆったりな分、サイケデリックな空気が強まっています。
5曲目「Marching Theme」は、イントロから多種多様なサウンドが飛び交う、カラフルな1曲。それぞれの音はノイズ的だったり、ファニーな効果音のようだったりするのに、全体としては楽しく鮮やかな空気を作り上げています。
ラストの12曲目「Pree-Sisters Swallowing A Donkey’s Eye」は、13分を超える大曲です。ギターのフィードバックが響き渡る前半から、アンビエントな展開へ。歌が無く、アルバム中でもポップな部類の曲ではありません。しかし、このような音響的な曲を最後に持ってくるところに、彼らの音楽的な志向が垣間見えます。
ノイズあり、カオスあり、かなり奇妙な音も含まれているのに、全体としては非常にポップで、上質のインディー・ロックと言っていいアルバムだと思います。また、1996年という時代性もあるかもしれませんが、全体のサウンド・プロダクションにはガレージのような、ややざらついた耳ざわりもあります。
最後に収録されている「Pree-Sisters Swallowing A Donkey’s Eye」は、かなり実験的、ポストロック的(クラウトロック的と言ってもいいかもしれない)な曲ですが、そんな楽曲も含めて、多種多様な音とアレンジが、目いっぱい詰め込まれたアルバムです。