Of Montreal “Cherry Peel”
オブ・モントリオール 『チェリー・ピール』
発売: 1997年7月15日
レーベル: Bar/None (バーナン)
コロラド州デンバーで幼なじみの友人たちで結成され、その後ジョージア州アセンズに拠点を移す音楽コミュニティ、エレファント6(Elephant 6)。そのエレファント6を代表するバンドのひとつ、オブ・モントリオールの1stアルバムです。ニュージャージー州のインディー・レーベル、Bar/Noneからのリリース。
時期により音楽性の異なるオブ・モントリオール。1stアルバムである本作では、ローファイなサウンドに乗せて、無邪気なギターポップを奏でています。
ギター、ベース、ドラムの3ピースによる、シンプルなアンサンブルに、ゆるいボーカルとコーラスワークが合わさる、バンドの楽しさに溢れたアルバムです。
1曲目「Everything Disappears When You Come Around」は、アコースティック・ギターのコード・ストローク、やや隙のある手数の少ないリズム隊に、力の抜けたリラクシングなボーカルが溶け合う、なんとも平和な1曲。
2曲目「Baby」は、リズムが随所で伸縮するような、まったりとした躍動感のある1曲。
3曲目「I Can’t Stop Your Memory」は、曲中でリズムが切り替わり、コントラストの鮮やかな1曲。再生時間0:21あたりから入るキーボードと思われるファニーなサウンドもアクセント。
5曲目「Don’t Ask Me To Explain」は、やや歪んだギターと高音のコーラスワークが、ジャンクでローファイな空気を醸し出す1曲。
6曲目「In Dreams I Dance With You」は、2分ちょっとのコンパクトな1曲ながら、イントロのシタールのようなサウンド、再生時間1:29あたりからの4拍子から3拍子へのリズムの切り替えなど、フックの多い1曲。
7曲目「Sleeping In The Beetle Bug」は、各楽器が複雑に絡み合いながら疾走する、ファットでジャンクなサウンドの1曲。
8曲目「Tim I Wish You Were Born A Girl」は、ローファイ風味は控えめに、アコースティック・ギターとボーカルを中心にした、ナチュラルなサウンドを持った曲。ですが、再生時間1:25あたりから入ってくる独特のハーモニーを持ったギターが、サイケデリックでアヴァンギャルドな空気を吹き込みます。
11曲目「I Was Watching Your Eyes」は、歯切れのよいギターに、シンプルでタイトなリズム隊が重なる、メリハリのあるアンサンブルが展開する1曲。サウンド・プロダクションも基本的にはナチュラルですが、随所に入ってくる倍音豊かなギター(あるいはキーボード?)らしき音が、わずかにサイケデリックな雰囲気を添えています。
12曲目「Springtime Is The Season」は、シンセサイザーで出しているのか、電子音が前面に出る1曲。ギター主導の本作の中では、特異なサウンドとして響きます。しかし、ミニマルでローファイかつポップな、オブ・モントリオールらしい耳ざわりの曲に仕上がっています。
先にも書いたとおり、サウンド・プロダクションにはローファイ色が強く、音圧の高いハイファイ・サウンドから比較すると、チープなサウンドと言えます。しかし、その音質がメロディーを前景化し、親しみやすさを演出し、魅力に転化しています。
また、テクニック的にも、特別に優れているという印象はありませんが、全くのヘロヘロなローファイではなく、アンサンブルは機能的で、随所にアレンジのかっこよさを感じるアルバムでもあります。