Polvo “Shapes” / ポルヴォ『シェイプス』


Polvo “Shapes”

ポルヴォ 『シェイプス』
発売: 1997年9月23日
レーベル: Touch And Go (タッチ・アンド・ゴー)
プロデュース: Bob Weston (ボブ・ウェストン)

 ノースカロライナ州チャペルヒル出身のバンド、ポルヴォの4thアルバム。前作に引き続き、シカゴの名門レーベル、タッチ・アンド・ゴーからのリリースで、レコーディング・エンジニアはボブ・ウェストンが担当。

 前作リリース後に、ドラムのエディー・ワトキンス(Eddie Watkins)が友好的に脱退。本作では、新ドラマーにブライアン・ウォルズビー(Brian Walsby)を迎えています。

 また、ドラマーの交代以外にも、ギターのデイヴ・ブリラースキー(Dave Brylawski)が大学院に進学するためニューヨークへ引っ越し。フロントマンのアッシュ・ボウイ(Ash Bowie)は、ボストンを拠点に活動するバンド、ヘリウム(Helium)に参加するために同地に引っ越すなど、バンドは不安定に。本作を1997年に完成させたのち、友好的に解散します。

 そんなわけで、今作は解散前最後のアルバムということになります。(2008年には再結成を果たすのですが)

 ジャンクなサウンドとアレンジを散りばめながら、東洋的なフレーズやロングトーンをアクセントに織り混ぜるのが、ポルヴォの音楽の特徴。4作目となる本作でも、アングラな香りと、エスニックな香りを漂わせながら、ポップさも失わない絶妙なバランスのアンサンブルが展開されます。

 特にギターの音作りは特徴的で、ジャンクで下品に歪んだサウンドや、弦が緩んだような奇妙なサウンドも使用されますが、歌モノとしてのポップさと共存。アヴァンギャルドであるのと同時に、穏やかでポップな音楽としても成立しています。

 1曲目「Enemy Insects」は、鳥のさえずりや川の音が聞こえる、フィールド・レコーディングからスタート。その後に、潰れたように下品に歪んだギターが入り、穏やかなボーカルを中心に、緩やかなアンサンブルが展開されます。基本的には歌を中心に据えた、穏やかな1曲ですが、随所にギターによる激しく歪んだサウンドや、調子のハズれた高音フレーズが差し込まれ、アヴァンギャルドな空気も多分に含まれています。

 2曲目「The Fighting Kites」は、シタールらしき音と、太鼓の音が響く、民族音楽色の濃い1曲。奥の方でも、東洋的なドローンが、全体を包むように鳴っています。

 3曲目「Rock Post Rock」は、民族音楽色の強い2曲目からシームレスに繋がり、ビートが加わりカントリーと民族音楽の折衷のようなイントロから幕を開けます。その後は、ギターが前面に出た、ざらついたローファイなサウンドで、躍動感のあるロックが展開。

 4曲目「The Golden Ladder」は、シタールらしき音とドラム、コーラスワークが重なり、インド音楽のような聴感の1曲。ドラムのリズムには、ロック的なダイナミズムがあり、他ジャンルのコピーで終わらないところがポルヴォらしいところ。

 7曲目「Twenty White Tents」は、スローテンポに乗せて、音数を絞った各楽器が、有機的に絡み合うようにアンサンブルが展開する、メロウな1曲。囁くようなボーカルの歌唱も、楽曲の陰のある雰囲気を演出します。

 8曲目「Everything In Flames!」は、イントロからエフェクト処理された奇妙な音、激しく歪んだギターの音が飛び交う、ジャンクなロック・チューン。全体のサウンド・プロダクションは、かなりアヴァンギャルドであると言えますが、ドタバタしつつ多様な音が飛び交い、カラフルでポップに仕上げっています。

 10曲目「El Rocío」は、12分を超える大曲。歌の無いインストゥルメンタルで、音数を絞ったサウンド・スケープが展開される、ポストロック色の濃い1曲です。

 ポルヴォの音楽性には、しばしば東洋風味があると言及されますが、本作はここまでの4作の中で、最も東洋的な要素、民族音楽的なアプローチが、色濃く出た作品と言えます。

 カントリーに、電子音や激しく歪んだギター、実験的なアレンジを合わせたものを、オルタナ・カントリーと呼びますが、本作も東洋の音楽に、ローファイなサウンドを合わせ、コンパクトなロック・ソングに仕上げていて、オルタナ民族音楽とでも呼びたくなる音楽を展開しています。

 前述したとおり、本作を最後にポルヴォは解散。2008年に再結成し、2009年に12年ぶりとなる5thアルバムをリリースしています。