Gorilla Biscuits “Gorilla Biscuits” / ゴリラ・ビスケッツ『ゴリラ・ビスケッツ』


Gorilla Biscuits “Gorilla Biscuits”

ゴリラ・ビスケッツ 『ゴリラ・ビスケッツ』
発売: 1988年7月14日
レーベル: Revelation (レヴェレーション)
プロデュース: Don Fury (ドン・フューリー)

 1987年にニューヨークで結成されたハードコア・パンクバンド、ゴリラ・ビスケッツの7インチ作品。レコード時代は7曲収録、CD化された際に5曲追加されて、12曲収録となっています。現在、デジタル配信されているのも、CDと同様の12曲。

 前述のとおり、当初は7曲入りの7インチで発売されたため、アルバムと見なすべきなのか、EP扱いなのかは微妙なところ。サイトや書籍で言及される際にも、アルバム扱いとEP扱いの両方が存在します。参考までに、ウィキペディアではアルバム扱い。

 1980年代後半から、ハードコア・シーンを牽引したレーベル、レヴェレーションからのリリース。

 スピード感あふれる演奏と、メロディアスな歌メロが共存し、独自のハードコア・サウンドを作り上げたゴリラ・ビスケッツ。一体感と疾走感のあるバンドのアンサンブルに、ボーカルが速さにまかせてシャウトするだけではない、起伏のあるメロデイーを曲芸的に乗せていきます。

 ハードコアの持つスピード感という魅力を損なうことなく、メロディーだけ取り出しても十分に楽しめるポップさを併せ持っているところが、このバンドの最大に魅力。

 速度と攻撃性をとことん追求しハードコアを極めるか、あるいは速度を落とし、アンサンブルやメロディーや実験性を重視し、独自のポスト・ハードコアを作り上げるか、という2つの主要な選択肢があるところで、速度とメロディーを共存させることに成功しているのが本作です。

 大半の曲が2分以内に終わり、CD版では12曲で収録時間は19分28秒と、ハードコアらしく曲もコンパクトにまとまっていますが、多彩なメロディーが聴こえるアルバムになっています。

 8曲目に収録されている「Sittin’ Round At Home」は、イギリスのパンクロック・バンド、バズコックス(Buzzcocks)のカバー。

 その後のパワー・ポップやポップ・パンクに影響を与えたバズコックスの楽曲を取り上げていることも示唆的で、ゴリラ・ビスケッツがスピード感と同じぐらいメロディーも大切にしているバンドだと、物語っていると言えるでしょう。