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Gorilla Biscuits “Start Today” / ゴリラ・ビスケッツ『スタート・トゥデイ』


Gorilla Biscuits “Start Today”

ゴリラ・ビスケッツ 『スタート・トゥデイ』
発売: 1989年3月1日
レーベル: Revelation (レヴェレーション)
プロデュース: Don Fury (ドン・フューリー)

 ニューヨークで結成されたハードコア・パンクバンド、ゴリラ・ビスケッツの1989年リリースのアルバム。

 前年の1988年にリリースされた『Gorilla Biscuits』が7曲入りの7インチで、アルバム扱いかEP扱いか微妙なため、本作を1stアルバムとする場合と、2ndアルバムとする場合があります。

 前作と同じく、ハードコア系のレーベル、レヴェレーションからのリリース。プロデュースも前作に引き続き、ドン・フューリーが担当していますが、クレジット上は「Donny F」と表記。

 CD版では、クレジット上は12曲収録で、シークレット・トラックとして2曲が収録され、実質14曲収録。現在デジタル配信されているバージョンは、シークレット・トラックもきちんとタイトルを付されてクレジットされた、14曲収録となっています。

 1989年にリリースされた本作は、ハードコア・パンクの名盤に数えられる1枚です。ハードコアが持つスピード感を損なうことなく、シングアロングがわき起こりそうな親しみやすい歌メロが共存し、独自の音楽を作り上げています。

 前作『Gorilla Biscuits』から、スピード感とメロディーの両立は実現されていたのですが、本作ではバンドのアンサンブルの面でも、立体的なアレンジが増加し、音楽性の幅がさらに広がっています。

 ハイテンポの疾走感あふれる曲も、もちろん多いのですが、途中でテンポを切り替えたり、各楽器が絡み合うように有機的にアンサンブルを構成する曲など、音楽的な引き出しが確実に増加しています。

 とにかく速度重視のハードコアは、それはそれでかっこいいですし、むしろ極限まで速度や攻撃性を突き詰めることがハードコアの魅力でもあります。しかし、高速ビートの上を駆け抜けるように、メロディアスな歌メロを乗せるゴリラ・ビスケッツの音楽も、同じぐらい魅力的。

 速度とメロディーの両立という点で、後続のメロコアやパンク・バンドたちに与えた影響は、少なからずあるでしょう。

 





Gorilla Biscuits “Gorilla Biscuits” / ゴリラ・ビスケッツ『ゴリラ・ビスケッツ』


Gorilla Biscuits “Gorilla Biscuits”

ゴリラ・ビスケッツ 『ゴリラ・ビスケッツ』
発売: 1988年7月14日
レーベル: Revelation (レヴェレーション)
プロデュース: Don Fury (ドン・フューリー)

 1987年にニューヨークで結成されたハードコア・パンクバンド、ゴリラ・ビスケッツの7インチ作品。レコード時代は7曲収録、CD化された際に5曲追加されて、12曲収録となっています。現在、デジタル配信されているのも、CDと同様の12曲。

 前述のとおり、当初は7曲入りの7インチで発売されたため、アルバムと見なすべきなのか、EP扱いなのかは微妙なところ。サイトや書籍で言及される際にも、アルバム扱いとEP扱いの両方が存在します。参考までに、ウィキペディアではアルバム扱い。

 1980年代後半から、ハードコア・シーンを牽引したレーベル、レヴェレーションからのリリース。

 スピード感あふれる演奏と、メロディアスな歌メロが共存し、独自のハードコア・サウンドを作り上げたゴリラ・ビスケッツ。一体感と疾走感のあるバンドのアンサンブルに、ボーカルが速さにまかせてシャウトするだけではない、起伏のあるメロデイーを曲芸的に乗せていきます。

 ハードコアの持つスピード感という魅力を損なうことなく、メロディーだけ取り出しても十分に楽しめるポップさを併せ持っているところが、このバンドの最大に魅力。

 速度と攻撃性をとことん追求しハードコアを極めるか、あるいは速度を落とし、アンサンブルやメロディーや実験性を重視し、独自のポスト・ハードコアを作り上げるか、という2つの主要な選択肢があるところで、速度とメロディーを共存させることに成功しているのが本作です。

 大半の曲が2分以内に終わり、CD版では12曲で収録時間は19分28秒と、ハードコアらしく曲もコンパクトにまとまっていますが、多彩なメロディーが聴こえるアルバムになっています。

 8曲目に収録されている「Sittin’ Round At Home」は、イギリスのパンクロック・バンド、バズコックス(Buzzcocks)のカバー。

 その後のパワー・ポップやポップ・パンクに影響を与えたバズコックスの楽曲を取り上げていることも示唆的で、ゴリラ・ビスケッツがスピード感と同じぐらいメロディーも大切にしているバンドだと、物語っていると言えるでしょう。