The Jon Spencer Blues Explosion “Orange” / ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン『オレンジ』


The Jon Spencer Blues Explosion “Orange”

ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン 『オレンジ』
発売: 1994年10月14日
レーベル: Matador (マタドール)
プロデュース: Jim Waters (ジム・ウォーターズ)

 元プッシー・ガロアのジョン・スペンサーを中心に、1991年に結成された、ギター2人とドラムからなるベースレスの3ピース・バンド、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの4thアルバム。

 ブルースを下敷きにしながらジャンクなギターが随所で鳴り響き、プッシー・ガロアの残り香をわずかに感じる前作『Extra Width』と比較すると、サウンドもアンサンブルもソリッドになったのが本作『Orange』。

 ブルースやガレージ・ロックを基本に、前述したとおりベースレスの3ピースによる、躍動感あふれるアンサンブルが展開されていきます。ジャンク成分は後退し、アンサンブルが前景化したアルバムと言えます。

 1曲目「Bellbottoms」は、3ピースのタイトなアンサンブルに、ストリングスが重なり、楽曲に立体感を加えています。ストリングスは、壮大でオーケストラルな雰囲気も漂わせていますが、アングラ感のあるコーラスワークをバランスを取り、ジャンクな空気も共存。

 2曲目「Ditch」は、2本のギターが絡みあうように躍動し、ドラムは手数は少ないながら、フックを随所に作りながらリズムを刻んでいく、グルーヴ感抜群の1曲。

 7曲目「Orange」は、物憂げなボーカルと、緩やかに躍動するアンサンブルが溶け合う、ミドル・テンポの1曲。ブルージーな空気を持ちながら、この曲でもストリングスが効果的に用いられ、奥行きのある楽曲に仕上がっています。

 10曲目「Blues X Man」は、ゆったりとしたリズムに乗せて、立体的なアンサンブルが展開される1曲。基本的なリズムとコード進行は循環ですが、音の縦への重ね方が、楽曲を立体感をもたらしています。

 プッシー・ガロア以来のジャンクな魅力も持ちつつ、よりソリッドなサウンド・プロダクションとアンサンブルを持ったアルバム。グルーヴ感は本当に素晴らしく、いつの間にか、耳が音楽にとらわれてしまうような感覚に陥ります。

 1994年に発売された当初は13曲収録でしたが、2010年に再発された際にはCD2枚組で合計34曲収録となっています。このデラックス版は、現在ではデジタル配信でも聴けます。