Sunn O))) “White1”
サン 『ホワイト・ワン』
発売: 2003年4月22日
レーベル: Southern Lord (サザンロード)
プロデュース: Rex Ritter (レックス・リッター)
ワシントン州シアトル出身のドローン・メタル・バンド、サンの3rdアルバム。
メンバーは、カネイト(Khanate)やバーニング・ウィッチ(Burning Witch)でも活動するステファン・オマリー(Stephen O’Malley)と、ゴートスネイク(Goatsnake)やエンジン・キッド(Engine Kid)でも活動するグレッグ・アンダーソン(Greg Anderson)。ギタリスト2名からなるバンドです。
グレッグ・アンダーソンが設立した、ドローン・メタル、ドゥーム・メタルを中心に扱うレーベル、サザンロードからのリリース。
ギタリスト2名による、リズム隊不在のバンド。その編成からして示唆的ですが、徹底的に重く、沈みこむようなサウンドを追求していくのが、サンです。メタルという音楽が持つ、テクニカルな速弾きやアンサンブルは放棄し、サウンドの持つ重厚さを凝縮し、抽出した音楽が展開されます。
前述したとおり、ギタリスト2名からなるバンドですが、作品毎にゲスト・ミュージシャンを招くことが多く、本作でも数名のゲスト・ミュージシャンがレコーディングに参加しています。
1曲目の「My Wall」は、不穏に響くギター・サウンドと、重々しい演説のようなポエトリー・リーディングによる1曲。ポエトリー・リーディングを担当しているのは、ゲストのジュリアン・コープ(Julian Cope)。イギリス出身で、ミュージシャン、作家、詩人、音楽学者と多彩な活動を展開している人物。25分を超える長尺の1曲で、中盤以降はギターのサウンドの厚みが増し、より重たく、響き渡ります。
2曲目「The Gates Of Ballard」には、ゲスト・ボーカルとしてノルウェー出身のルンヒルド・ギャマルセター(ランヒルド・ガメルセター,Runhild Gammelsæter)が参加。トールズ・ハンマー(Thorr’s Hammer)というバンドで、サンの2人と活動を共にし、細胞生理学の博士号を持ち、生物学者としての一面も持つという人物。彼女がイントロからしばらく、故郷ノルウェーの民謡「Håvard Hedde」を歌っているのですが、バックに流れる陰鬱なギターのドローンと相まって、ボーカルも重々しく、どこか不気味に響きます。
ボーカルのパートが終わり、再生時間2:20あたりからは、打ち込みによるドラムのビートが加わります。ドラムはおそらく意図的に軽くチープな音質でレコーディングされ、ギターはドラムとは絶妙にリズムをズラして演奏。ぴったりと合わせないことで、ますますリズムが引きずるように重く感じられ、ドラムのチープな音質とも相まって、沈み込むような重いギター・サウンドが前景化されます。
3曲目の「A Shaving Of The Horn That Speared You」は、ギターの重たいサウンドは鳴りを潜め、不穏な空気が充満するアンビエントな1曲です。
3曲収録で約60分。循環するコード進行など明確な構造はなく、一般的な意味でのポップさはほとんど無いと言っていいアルバムです。
前述したとおり、メロディーを追う、リズムに乗るという楽しみ方ではなく、ただただ音楽に身を委ね、なるべく音量を上げてサウンドに圧倒される、という作品でしょう。
リスナーを選ぶ音楽であるのは事実ですし、この手の音楽は受け付けないという方もいらっしゃるでしょうが、アルバムによって違った景色を見せてくれるのが、このサンというバンドです。