Sunn O))) “White2” / サン『ホワイト・ツー』


Sunn O))) “White2”

サン 『ホワイト・ツー』
発売: 2004年6月29日
レーベル: Southern Lord (サザンロード)
プロデュース: Rex Ritter (レックス・リッター)

 ステファン・オマリー(Stephen O’Malley)と、グレッグ・アンダーソン(Greg Anderson)。ワシントン州シアトル出身の2人のギタリストによるドローン・メタル・バンド、サンの4枚目のスタジオ・アルバム。

 前作『White1』と同じく、グレッグ・アンダーソンが設立したドローン・メタル系のレーベル、サザンロードからのリリース。

 前作は3曲で約59分という収録時間でしたが、本作も3曲で約63分。全ての曲(と言っても3曲ですが…)が10分を超え、重く引きずるようなギターのサウンドが、前面に押し出された1作となっています。

 正式メンバーは2名のみですが、ゲスト・ミュージシャンとのコラボレーションも多いサン。本作でも、ノルウェー出身のブラックメタル・バンド、メイヘム(Mayhem)のボーカリスト、アッティラ・シハー(Attila Csihar)や、シカゴ出身のロック・バンド、ジェサミン(Jessamine)の元ベーシスト、ドーン・スミソン(Dawn Smithson)など、数名のゲスト・ミュージシャンを招いています。

 ちなみに、アッティラ自身はノルウェーではなくハンガリー出身。本作のプロデューサーを務めるレックス・リッターは、スミソンと同じくジェサミンの元メンバー。どちらかと言うと、ポストロックやスペース・ロックにカテゴライズされるジェサミンの元メンバーが、ドローン・メタルのサンと関わるというのも興味深いです。

 1曲目「Hell-O)))-Ween」は、本作では最も短い14分ほどの1曲。ギターの厚みのあるサウンドが響き、重なり、うねりながら躍動する、サンらしいヘヴィ・ドローンが繰り広げられます。いわゆるメロディーやビートは存在しない曲ですが、重心の低い、厚みのあるギター・サウンドは心地よく、音楽に包み込まれるような感覚に陥ります。ぜひ大音量で、身を委ねるようにして聴いてください。

 2曲目「BassAliens」は、1曲目の轟音ギターは鳴りを潜め、イントロからアンビエントな不気味な空気が充満する1曲。タイトルのとおり中盤以降は、ベースらしき音がエイリアンのごとく激しく動き回ります。とはいえ、ベースとはわからないぐらい、もしかしたらベースではないかもしれないぐらい、深くエフェクトをかけられ、奇妙なサウンド。ダークで不穏な空気が最後まで続きますが、ベースの音をはじめ音作りがあまりにも奇妙なため、1周回ってむしろ笑えてくるぐらいです(笑)

 3曲目「Decay2 [Nihil’s Maw]」には、前述したとおりメイヘムのアッティラ・シハーが参加。ハードに歪んだ轟音ギターではなく、重苦しいドローンが場を埋め尽くすアンビエントな1曲。闇をそのまま音に還元したかのようなドローン・サウンドに、アッティラの不気味なうめき声とスポークン・ワードが重なり、不穏な空気が充満していきます。

 アルバム全体を通して、圧倒的な轟音ギターで押し流すのではなく、重低音から中音域にかけてを埋め尽くす、重たいドローンが主軸になっています。ベースの演奏を「地を這うように」と形容することがありますが、本作は地を這うというよりも、地面が沈み込むような重々しいサウンドが充満。リスナーを選ぶ音楽ではありますが、ここでしか聴けない唯一無二の音を発しているバンドであることも確かです。

 この種の音楽を聴かない方からすると「全部同じに聞こえる」「何をやってるのか分からない」「とにかく不気味で怖い」と感じられるかもしれませんが、サンというバンドの優れたところは、作品によって毛色が異なるところ。

 決してカラフルな音楽ではありませんが、ワンパターンの轟音ノイズか重厚ドローンが、ただただ続く音楽ではなく、楽曲によって伝わるものが違います。本作は、前作『White1』と比較しても、重たく陰鬱で、そういう意味では、オススメしにくいアルバムかもしれません。