Botch “American Nervoso” / ボッチ『アメリカン・ナーヴォソ』


Botch “American Nervoso”

ボッチ 『アメリカン・ナーヴォソ』
発売: 1998年5月20日
レーベル: Hydra Head (ハイドラ・ヘッド)
プロデュース: Matt Bayles (マット・ベイルズ)

 1993年にワシントン州タコマで結成されたメタルコア・バンド、ボッチの1stアルバム。

 結成当初から数年間は、メタルコアというよりも、ガレージ・ロックに近い音楽性だったボッチ。しかし、エクストリーム・メタルを得意とするレーベル、ハイドラ・ヘッドと契約し、1998年に本作『American Nervoso』をリリースする頃には、テクニカルで複雑なアンサンブルを構成する、メタルコアあるいはマスコアと呼ばれるジャンルへと、音楽性を固めています。

 日本語の語感で「ボッチ」というと、少し寂しげな感じがしますけど、凄まじいテンションでアグレッシヴな音をぶちまけるバンドです。

 ボストン出身のマスコア・バンド、コンヴァージ(Converge)と並んで、メタル側ではなく、ハードコア・パンク側から、メタルコアやマスコアと呼ばれることになるジャンルへ、接近していったバンドの代表格と言えるでしょう。

 1曲目の「Hutton’s Great Heat Engine」から、地中からマグマが噴き出すように、音が押し寄せてきます。ドラムのつっかえるようなリズムと、ギターのうねるようなフレーズが、焦燥感を演出。ボーカルの切迫したシャウトと相まって、ヒリヒリとした空気と緊張感を生んでいきます。

 2曲目は「John Woo」という、印象的なタイトルを持つ曲。1曲目と同じく、イントロから凄まじいテンションの音が噴出してきます。再生時間0:51あたりからの波を打つようなギターのフレーズから、シフトが切り替わり、緩急のあるアンサンブルが展開。

 3曲目「Dali’s Praying Mantis」は、イントロのギターのフレーズに続いて、各楽器が絡み合うように、アンサンブルを組み上げていく1曲。

 4曲目「Dead For A Minute」は、スロー・テンポに乗せて、長めの音符が不穏な空気を充満させていくイントロから、激しくアグレッシヴな音が溢れ出し、静と動を鮮烈に行き来します。

 5曲目「Oma」は、高速のビートに乗って、バンド全体が前のめりになりながら疾走していく1曲。

 6曲目「Thank God For Worker Bees」は、イントロからのギターとドラムは、音がつぶれたようなジャンクな音質でレコーディングされており、ボーカルもヴェールをかぶったように奥まった音質。このような音質のために、曲前半はアングラ臭が漂いますが、再生時間0:58あたりから、リミッターが外れたように鮮明でパワフルなサウンド・プロダクションへ。その後は、捻れつつも疾走する、このバンドらしいアンサンブルが展開します。

 9曲目「Hives」は、リズムにほどよく隙間があり、疾走感よりも躍動感を重視した、立体的なアンサンブルが展開される1曲。ギターの厚みのあるサウンドと、次々と姿を変える変幻自在なリフが、曲をカラフルに彩ります。

 硬質なサウンド・プロダクションと、高度なテクニックを駆使する演奏からは、メタルの要素も色濃く感じられるものの、同時にスピード感あふれるハードコア・パンクや、変拍子を織り交ぜる複雑怪奇なマスロックなど、USインディーらしい要素も感じさせる1作です。