Wooden Wand & The Sky High Band “Second Attention” / ウッデン・ワンド・アンド・ザ・スカイ・ハイ・バンド『セカンド・アテンション』


Wooden Wand & The Sky High Band “Second Attention”

(Wooden Wand And The Sky High Band)
ウッデン・ワンド・アンド・ザ・スカイ・ハイ・バンド 『セカンド・アテンション』
発売: 2006年8月22日
レーベル: Kill Rock Stars (キル・ロック・スターズ)

 1978年、ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。「ウッデン・ワンド」というステージ・ネームで活動するジェームス・ジャクソン・トス(James Jackson Toth)が、ザ・スカイ・ハイ・バンドを従え「ウッデン・ワンド・アンド・ザ・スカイ・ハイ・バンド」名義でリリースした唯一のアルバム。

 ザ・スカイ・ハイ・バンドは、単独で活動歴があるバンドではないようで、少なくとも音源のリリースは、本作と2007年にリリースされた、ライブ・レコーディングによる作品『Wasteland Of The Free』の2作のみ。

 伝統的なフォークから、サイケデリック・フォーク、実験的なフォークまで、一貫して「フォーク」という音楽と向き合い、キャリアを重ねてきたウッデン・ワンド。ザ・スカイ・ハイ・バンドと共に作り上げた本作『Second Attention』でも、伝統的フォークを下敷きにしながら、随所にオルタナティヴなアレンジが施され、ほのかにサイケデリックな香りが漂う1作になっています。

 「バンドと共に制作した」という情報に惑わされているわけではなく、有機的なアンサンブルが展開され、バンド感の強い作品でもあります。バンドらしいグルーヴもあり、曲によっては意外性のあるエレキ・ギターが唸りをあげるため、オルタナ・カントリーを好む方にもオススメ。

 1曲目「Crucifixion, Pt. II」は、アコースティック・ギターとボーカルを中心に据えた、弾き語りに近いアレンジながら、浮遊感のあるボーカルの歌唱から、どこかサイケデリックな空気が漂う1曲。

 2曲目「Portrait In The Clouds」は、浮遊感のあるサウンド・プロダクションが耳をつかむ、牧歌的なフォーク・ロック。前半からドタバタ感のあるアンサンブルが展開され、再生時間1:44あたりからエレキ・ギターが入ってくると、オルタナティヴな空気が増していきます。

 3曲目「Rolling One Sun Blues」は、ローファイ風味のサウンド・プロダクションと、各楽器がゆるやかに絡み合いスウィングしていくアンサンブルから、サイケデリックな香り漂う1曲。特にドラムとギターのジャンクな音色が、耳に引っかかり、音楽的なフックとなっています。

 6曲目「Mother Midnight」は、アコースティック・ギターとボーカルが、揺らめくように音を紡ぐ前半から、徐々に楽器が増え、立体的なアンサンブルへと発展していく1曲。コーラスワークも穏やかながら、酩酊的で、サイケな空気を演出。

 7曲目「The Bleeder」は、アコギと歌を中心にした、牧歌的な1曲。ですが、左チャンネルから聞こえる、ギターのミュート奏法と思われる「ポツポツ」とした音、再試時間1:28あたりから始まるブルージーなギターソロが、曲を格段にカラフルに彩っています。

 8曲目「Madonna」は、ビートがはっきりと刻まれる、ノリの良い1曲。ミドルテンポのカントリー風の曲ですが、奥の方で鳴り続けるキーボードと思われる持続音が、現代的な雰囲気をプラス。

 9曲目「Dead Sue」では、各楽器が立体的に組み合い、一体感とゆるやかな躍動感のあるアンサンブルを展開していきます。7分弱ある曲ですが、音楽が徐々に表情を変えながら、ゆるやかに進んでいくため、心地よく聴き続けることができます。

 テンポも抑えめに、音数も詰め込み過ぎず、基本的には穏やかなフォークが続く1作。しかし、効果的にエレキ・ギターや電子音が用いられ、随所にアヴァンギャルドな空気を持った、カラフルな世界が描き出されています。

 パンクやオルタナのイメージが強い、キル・ロック・スターズからのリリースというのも少し意外なようで、エリオット・スミス(Elliott Smith)なども所属していたし、このレーベルらしい懐の深さだなと感じます。