Tim Hecker “An Imaginary Country”
ティム・ヘッカー 『アン・イマジナリー・カントリー』
発売: 2009年3月9日
レーベル: Kranky (クランキー)
カナダ、バンクーバー出身のエレクトロニック・ミュージシャン、ティム・ヘッカーの5thアルバム。
前作『Harmony In Ultraviolet』と同じく、アンビエントやエクスペリメンタル系の音楽に強いインディーズ・レーベル、クランキーからのリリース。
アルバム・タイトルの「An Imaginary Country」とは、日本語に訳せば「想像上の国」。タイトルが示唆するとおり、架空の国の大自然に触れながら旅をするような、壮大なサウンドスケープが繰り広げられる1作です。
言葉や分かりやすいメロディーは持たないものの、コンセプト・アルバムと言っても良いぐらい、一貫した流れを感じます。
1曲目の「100 Years Ago」から始まり、ラスト12曲目の「200 Years Ago」まで、風景を眺めながら時間を遡るように、多様な表情を見せるところが、このアルバムの最大の魅力ですね。
2曲目「Sea Of Pulses」、3曲目「The Inner Shore」、6曲目「A Stop At The Chord Cascades」、9曲目「Her Black Horizon」など、曲名にも自然をあらわす言葉が散りばめられ、こちらのイマジネーションをかき立てる音楽を展開。
本作の音響の特徴は、清潔感と透明感にあふれたサウンド・プロダクション。
1曲目の「100 Years Ago」では、柔らかな電子音が増殖するように空間を埋めていきます。コードや画一的なリズムによる進行感がないため、時間の中を漂うような気分になる1曲です。
2曲目「Sea Of Pulses」では、鼓動のようなベース音がリズムを刻み、その上にキラキラとした電子音が折り重なり、厚みのあるサウンドを構築。タイトルどおり、折り重なる電子音は波のようであり、一貫して響くベース音は海の鼓動のように響きます。
8曲目「Paragon Point」では、複数の電子的な持続音がレイヤー状に重なり、音の壁を立ち上がらせる1曲。
アルバム全体を通して、心地よく厚みのあるサウンドは一種のシューゲイザーのようでもあり、シガー・ロス(Sigur Rós)等のポストロックを彷彿とさせる部分もあります。
音響を前景化した作風でありながら、単調にならないところが、ティム・ヘッカーのミュージシャンとしての有能さの証左と言えるでしょう。
僕みたいな素人が適当に作ったら、絶対にこのような作品にはなりませんから(笑)
ディスクレビュー一覧へ移動