Ava Luna “Infinite House” / アヴァ・ルナ『インフィニット・ハウス』


Ava Luna “Infinite House”

アヴァ・ルナ 『インフィニット・ハウス』
発売: 2015年4月14日
レーベル: Western Vinyl (ウェスタン・ヴァイナル)

 ニューヨークのブルックリンを拠点に活動するインディーロック・バンド、アヴァ・ルナの3rdアルバム。

 前作と同じく、テキサス州オースティンのインディーズ・レーベル、ウェスタン・ヴァイナルからのリリース。日本ではインパートメント(Inpartmaint)より、ボーナス・トラックのダウンロード・クーポンが付いた日本盤が発売されています。

 前作は、メンバーのフェリシア・ダグラス(Felicia Douglass)の父親であり、グラミー受賞歴のある名サウンド・エンジニア、ジミー・ダグラス(Jimmy Douglass)がミックスを担当。

 本作ではダグラスに代わり、マーキュリー・レヴ(Mercury Rev)のメンバーとしても知られ、プロデューサーとしても著名なデイヴ・フリッドマン(Dave Fridmann)が、ミックスを担当しています。

 前述のフェリシア・ダグラスが、2018年からダーティ・プロジェクターズに参加していることもあり、たびたび同バンドと比較されることのあるアヴァ・ルナ。

 ただ、直接的に音楽性が似ているというよりも、共通しているのは音楽へのアプローチ。両バンドとも、多様なジャンルを参照しながら、コンパクトなバンドのフォーマットへとまとめあげるのを得意としています。

 前作『Electric Balloon』は、多様なジャンルを参照したインディーロックと、ソウルやR&Bなどブラック・ミュージックが融合。ガレージやノイズ、フリージャズなど、いかにもニューヨークのアングラらしい香りも漂わせながら、地に足の着いたアンサンブルを展開していました。

 前作から約1年ぶりのリリースとなる本作。前作と同じく多様なジャンルを取り込みながら、よりサイケデリック色の濃い音楽を鳴らしています。

 ざらついた歪みのギターが多用され、ガレージロックを彷彿とさせる要素もあった前作と比較すると、本作はよりノーウェーヴやポストパンク色が増したとも言えるでしょう。

 例えば1曲目の「Company」では、シンプルでタイトなアンサンブルを中心に据えながら、シンセのソフトな音色と、ギターの断片的なフレーズ、静と動を行き来するメリハリのきいたアレンジが共存。ゆるやかな躍動感が基本にありながら、ソフトなサイケ要素、ロックのダイナミズムを内包した1曲になっています。

 アルバム表題曲の6曲目「Infinite House」では、コーラスワークも含め、各楽器のフレーズがゆるやかに絡み合い、立体的かつ浮遊感のあるアンサンブルが展開。空中を散歩するようなリズムと、モヤがかかったような柔らかなサウンド・プロダクションが、サイケデリックな空気を演出します。

 前作に比べると、アルバム全体をとおして、ブラック・ミュージックの要素が後退。前作で聞かれたファンキーな躍動感も鳴りを潜め、その代わりに音響が前景化しています。

 各楽器の音作りも多彩になり、バンドとしての音楽性を拡大した1作とも言えるでしょう。

 2018年12月現在、各種サブスクリプション・サービスでの配信、デジタル販売などは、されていないようです。

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