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The White Stripes “White Blood Cells” / ザ・ホワイト・ストライプス『ホワイト・ブラッド・セルズ』


The White Stripes “White Blood Cells”

ザ・ホワイト・ストライプス 『ホワイト・ブラッド・セルズ』
発売: 2001年7月3日
レーベル: Sympathy For The Record Industry (シンパシー・フォー・ザ・レコード・インダストリー)
プロデュース: Stuart Sikes (スチュアート・サイクス)

 ミシガン州デトロイト出身のガレージロック・バンド、ザ・ホワイト・ストライプスの3rdアルバム。メンバーは、ギター・ボーカルのジャック・ホワイトと、ドラムのメグ・ホワイトの2人。

 ガレージロックを得意とするインディペンデント・レーベル、Sympathy For The Record Industryと、ユニバーサル傘下のメジャー・レーベル、V2レコードより発売。

 カントリー歌手ロレッタ・リン(Loretta Lynn)に捧げられており、本作からのシングル『Hotel Yorba』には、リンの楽曲「Rated X」のカバーが収録されています。

 また、レコーディング・エンジニアを務めるのは、スチュアート・サイクス。2005年のグラミー最優秀カントリー・アルバム賞を受賞する、ロレッタ・リン『Van Lear Rose』のミキシングを手がける人です。ちなみに同作は、ジャック・ホワイトがプロデュースを担当し、ギターやバッキング・ボーカルでレコーディングにも参加しています。

 デビュー当初は、ギターとドラムのみのパワフルな演奏で、ロックの初期衝動をそのまま音に変換したかのようなサウンドを、響かせていたホワイト・ストライプス。3作目となり、ざらついたガレージ的な音色はやや控えめ。音楽的には、確実に洗練されています。

 ブルースを下敷きにしたガレージロック、という基本的なアプローチはこれまで通り。また、本作収録曲の歌詞の多くは、1stアルバム『The White Stripes』の時期のもの、およびジャックが当時ホワイト・ストライプスと並行して在籍していたバンド、トゥー・スター・タバナクル(Two-Star Tabernacle)のために書いたものとのこと。

 しかし、音楽的には原点回帰というわけではなく、より多彩なルーツ・ミュージックを取り込みながら、90年代以降のオルタナティヴ・ロックに繋がるアレンジと音像を持っているのが本作です。

 過去2枚のアルバムは、いずれも地元デトロイトでレコーディングされていましたが、本作はテネシー州メンフィスにあるスタジオ、イーズリー・マケイン・レコーディング(Easley McCain Recording)で、レコーディングを実施。これまでのざらついた音色に比べ、サウンド・プロダクションが異なって聞こえるのは、レコーディング・スタジオの変更も一因でしょう。

 1曲目「Dead Leaves And The Dirty Ground」は、ゆったりとしたテンポに乗せて、ざらついた音色のギターと、手数の少ないドラムによって、リラックスしたアンサンブルが展開される1曲。プリミティヴな音作りとアンサンブルという、これまでのホワイト・ストライプスの良さを残しながら、良い意味で力の抜けた演奏になっています。

 2曲目「Hotel Yorba」は、アコースティック・ギターによる軽快なコード・ストロークと、ドラムのドタドタ叩きつけるリズムが躍動感を生む、カントリー色の濃い1曲。

 4曲目「Fell In Love With A Girl」は、ギターもドラムも小節線を乗り越えるように、前のめりに疾走していく曲。ガレージロックと呼ぶにふさわしい、毛羽立ったサウンド・プロダクションの曲ですが、演奏は軽やかな疾走感があります。

 5曲目「Expecting」は、スローテンポのガレージロック。ゆったりとしたテンポに乗って、リズムにフックを作りながら、グルーヴ感を生んでいきます。

 9曲目「We’re Going To Be Friends」は、アコースティック・ギターがフィーチャーされた牧歌的な1曲。ジャック・ホワイトの歌唱も、語りかけるように穏やか。奇をてらうことなく、歌にフォーカスした、カントリー色の濃い演奏です。

 12曲目「Aluminum」は、ノイジーなギターと呪術的なコーラスが場を支配する、アヴァンギャルドな1曲。ガレージロックよりも、ソニック・ユースなどニューヨークのアングラ臭を感じる演奏。

 13曲目「I Can’t Wait」は、ゆったりとしたテンポに乗せて、ざらついたサウンドの各楽器が絡み合い、アンサンブルを構成する、ホワイト・ストライプスらしいガレージロック。

 前述のとおり、カントリー歌手のロレッタ・リンに捧げられた本作。それだけが理由というわけでもないのでしょうが、これまでのアルバムと比較すると、ややカントリー要素が強めでしょうか。

 しかし、たんにカントリー色が濃くなっただけでなく、12曲目「Aluminum」のような、オルタナティヴ要素の強い実験的な曲もあり、音楽性の幅は確実に広がっています。

 1stアルバムから本作までの3枚のアルバムは、いずれもガレージ・ロックを得意とするレーベル、Sympathy For The Record Industryからのリリース。

 しかし、4作目となる次作『Elephant』から、ユニバーサル・ミュージック傘下のV2、およびジャック・ホワイトは自身で設立したレーベル、サード・マン(Third Man Records)よりリリースされます。