Don Caballero “World Class Listening Problem”
ドン・キャバレロ 『ワールド・クラス・リスニング・プロブレム』
発売: 2006年5月16日
レーベル: Relapse (リラプス)
プロデュース: Al Sutton (アル・サットン)
ペンシルベニア州ピッツバーグ出身のマスロック・バンド、ドン・キャバレロの通算5枚目のスタジオ・アルバムです。前作『American Don』を最後に一時的に解散していたドン・キャバレロが、ドラマーのデイモン・チェ(Damon Che)を中心にメンバーを替えて再結成し、リリースされたのが本作『World Class Listening Problem』。
以前、所属していたタッチ・アンド・ゴーから、メタル系を得意とするリラプスへ移籍してのリリース。また、プロデュースは、2ndアルバム『Don Caballero 2』と3rdアルバム『What Burns Never Returns』以来となる、アル・サットンが担当。
レーベルも移籍し、ドン・キャバレロの再編1作目。このような再編後は、音楽性が著しく変わっていたり、クオリティが明らかに落ちていたり、ということも珍しくないですが、今作『World Class Listening Problem』はすばらしい作品だと思います。
1stアルバム『For Respect』を思い出すような、激しく歪んだ轟音ギターが鳴り響き、ドラムもアグレッシヴにリズムを刻んでいく作品に仕上がっています。轟音で圧倒するだけでなく、以前のドン・キャバレロが持っていた緻密なアンサンブルも健在。ドラムのデイモン・チェ以外のメンバーは交替しているものの、解散前のドン・キャバレロらしさも感じられる演奏が展開します。
しかし、以前とは変わったところがあるのも事実。メタル系の音楽を得意とするリラプスに移籍したことも示唆的ですが、ギターを中心に全体的なサウンドは、メタル色が濃くなっています。ただ、それが欠点になっているかというとそうではなく、ハードなサウンドと、タイトなアンサンブルが溶け合う、以前よりダイナミズムの大きい作品です。
1曲目は「World Class Listening Problem」。イントロから、緊張感を演出するようなギターのフレーズに続いて、バンドがフルスロットルで感情を爆発させるような演奏を繰り広げます。前のめりにつっこんでくるようなドラムのリズムと、硬質なギターのサウンドの相性も抜群。
2曲目の「Sure We Had Knives Around」は、回転するようなドラムのイントロから、ギターがミニマルなフレーズを繰り返し、メタルとサイケデリック・ロックが融合したような1曲。
6曲目「World Class Listening Problem」は、各楽器が有機的に絡み合ってアンサンブルを構成し、解散前のドン・キャバレロを思わせる1曲です。
前述したとおり、メンバーの変更もあり、音楽性にも変化の見られる今作ですが、個人的には解散前のドン・キャバレロと同じぐらい、後期ドン・キャバレロも好きです。
以前から、デイモン・チェのドラムは音もプレイも最高だな、と思っていましたが、あらためて彼が優れたミュージシャンだと認識させられた1枚。一般的には、イアン・ウィリアムスの在籍していた、前期ドン・キャバレロの方が評価は高いですが、後期ドン・キャバレロもおすすめです!