David Grubbs “Rickets & Scurvy” / デイヴィッド・グラブス『リケッツ・アンド・スカーヴィー』


David Grubbs “Rickets & Scurvy”

デイヴィッド・グラブス 『リケッツ・アンド・スカーヴィー』
発売: 2002年5月20日
レーベル: Drag City (ドラッグ・シティ)

 イリノイ州シカゴ出身のミュージシャン、デイヴィッド・グラブスの2002年発売のソロ・アルバムです。レコーディングには、今回もトータスのジョン・マッケンタイアが参加。

 スクワール・バイトやバストロ、ガスター・デル・ソルなど様々なグループで活動してきたデイヴィッド・グラブス。彼の作る音楽は、非常に多岐にわたります。

 ドラッグ・シティからリリースされている彼の作品は、歌の入ったポップ・ミュージックの形式をそなえているものが多く、本作も例外ではありません。

 彼の歌モノ作品は、カントリーを下敷きにオルタナティヴな要素を溶け込ませたものが多いのですが、本作『Rickets & Scurvy』も、カントリーやフォークなどルーツ・ミュージックと、オルタナティヴ・ロックやポストロックの実験性を併せ持つアルバムだと言えます。

 1曲目「Transom」のイントロでは、アンビエントなノイズが響きます。不穏な空気のなか、再生時間0:18あたりから、バンドがタイトなアンサンブルを展開。ギターのフレーズにはカントリーの香りも漂いますが、デイヴィッドのメロディー感の希薄なボーカル、緊張感のあるアンサンブルは、インディー・ロック色の強い1曲です。

 2曲目「Don’t Think」は、複数のギターとパーカションが、立体的なアンサンブルを構成する1曲。アンサンブルもサウンドも立体的で、臨場感があります。

 3曲目「A Dream To Help Me Sleep」は、ピアノとアコースティック・ギターを中心に据えた穏やかな1曲。ですが、ピアノとギターが互いにかみ合いながら加速するような躍動感も持っています。

 5曲目の「I Did No Such Roaming」は、ギターがシンプルなフレーズを繰り返す、1分ほどのミニマルな曲。

 6曲目「Pinned To The Spot」は、ワウのかかったエレキ・ギターを、タイトなリズム隊が絡み合う、オルタナティヴ・ロック色の濃い1曲。緩急をつけ、コントラストを演出しながら、アンサンブルが展開されます。疾走感もあり、これはかっこいいです。

 8曲目「Precipice」は電子的なノイズと持続音が飛び交う、アンビエントな1曲。カントリー的なオーガニックな楽器の響きと、エレクトロニカやアンビエントを彷彿とさせるこの曲が、違和感なく同じアルバムに共存するところに、デイヴィッド・グラブスらしいセンスを感じます。

 ドラッグ・シティからリリースされている彼の作品の中では、やや実験的な色が濃い作品であると思います。しかし、ロックあり、アンビエントありで、多才なジャンルとサウンドの溶け合った、非常に面白い1作でもあります。