Mission Of Burma “The Obliterati” / ミッション・オブ・バーマ『ジ・オブリテラティ』


Mission Of Burma “The Obliterati”

ミッション・オブ・バーマ 『ジ・オブリテラティ』
発売: 2006年5月23日
レーベル: Matador (マタドール)
プロデュース: Bob Weston (ボブ・ウェストン)

 マサチューセッツ州ボストン出身のバンド、ミッション・オブ・バーマの3rdアルバムです。

 1979年に結成され、1982年に1stアルバム『Vs.』をリリースするものの、翌年にギタリストのロジャー・ミラー(Roger Miller)の耳鳴り悪化のため、解散するミッション・オブ・バーマ。彼らが2002年に再結成後、『ONoffON』のリリースに続き、2枚目のリリースとなるのが本作『The Obliterati』です。

 音圧が圧倒的に高いというわけではないのに、とにかく音が濃密で、迫力ある音像を持ったアルバムです。空気を揺るがすように響くドラム、ファットでコシのある音色のベース、曲によって変幻自在のディストーション。サウンドを聴かせるギター。各楽器の音が、どれも生々しく、臨場感を持って響きます。

 いわゆるドンシャリなサウンドではなく、全音域にわたって音が埋め尽くされているような、分厚いサウンドをバンド全体で作り上げていきます。演奏もスピード重視の直線的なものではなく、随所に知性を感じるアンサンブル。

 1曲目の「2Wice」。イントロのドラムの音がパワフルかつ立体的で、スタジオの空気の揺れまで伝わってくるかのよう。アルバムの幕開けにぴったりの1曲です。その後に入ってくるギターとベースの音にも、分厚い量感があり、バンドの音が時間と空間を埋め尽くします。

 3曲目の「Donna Sumeria」は、各楽器が分離して絡み合うイントロから、やがてひとつの塊のようなサウンドを形成。バンドのリズムと、ボーカルのメロディーが連動するような構造も、楽曲の躍動感を増幅しています。

 9曲目の「Careening With Conviction」は、ラフさとタイトさのバランスが抜群のリズム隊に、ギターが絡みつく1曲。最初はそれぞれ分離して認識できたいた各楽器のサウンドが、いつのまにか混じり合い、ひとつの塊のように感じられる展開も、かれらの音楽の特徴だと思います。

 とにかく音がかっこいいアルバムです。前述したとおり、僕は1曲目「2Wice」のドラムの音でノックアウトされます。

 ギターの音作りも、基本的には歪んでいるのですが、実に多彩なサウンド・カラーを使い分けています。アンサンブルも、ロックのダイナミズムと知性が共存した、非常にクオリティの高いものだと思います。

 日本での知名度はいまいちですが、もっと評価されていいバンドであり、アルバム。