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Lyres “On Fyre” / ライアーズ『オン・ファイア』


Lyres “On Fyre”

ライアーズ 『オン・ファイア』
発売: 1984年
レーベル: Ace Of Hearts (エース・オブ・ハーツ)
プロデュース: Richard W. Harte (リチャード・W・ハート)

 1976年にマサチューセッツ州ボストンで結成されたガレージ・ロック・バンド、DMZ。そのDMZが1978年に解散し、メンバーだったジェフ・コノリー(Jeff Conolly)を中心に結成されたのが、ライアーズです。本作は1984年にリリースされた1stアルバム。

 当時は彼らの地元ボストンのインディペンデント・レーベル、エース・オブ・ハーツから発売され、1998年にニューヨークの名門インディー・レーベル、マタドール(Matador)から再発されています。プロデューサーは、エース・オブ・ハーツの設立者でもあるリチャード・ハートが担当。

 1984年にLPで発売時は11曲収録ですが、現在ストリーミングでは5曲を追加し、16曲収録で配信されています。

 60年代ガレージ・ロックからの影響は明らかで、適度に荒れたドタバタ感のあるガレージ・ロックを鳴らしています。現代的なハイファイ・サウンドと比較すると、やや音圧不足でローファイに感じられる部分もありますが、その音質さえも魅力に感じられる、生々しく、良い意味で飾り気のないロックンロールが展開されます。

 ライアーズの音楽の特徴として、もうひとつ挙げられるのはオルガンの使用です。フロントマンのジェフ・コノリーは、ボーカルとオルガンを担当しており、本作でも全編でオルガンが使用されています。オルガンの音色も60年代のロックを感じさせるもので、ガレージに加えて、サイケデリックな空気感をプラス。アルバムを、より多彩にしています。

 また、発売当初の11曲の収録曲のうち、5曲目「Love Me Till The Sun Shines」と7曲目「Tired Of Waiting」は、1964年結成のイギリスのロックバンド、キンクス(The Kinks)のカバー。ガレージだけにとどまらない音楽性の幅が、ここからも窺えます。

 2012年には、フロントマンのジェフ・コノリーが単独来日。日本のTHE FADEAWAYSがバックバンドを務めるかたちで、DMZとライアーズの楽曲を披露する日本公演を実現。息の長いバンドです。

 





Mission Of Burma “ONoffON” / ミッション・オブ・バーマ『オン・オフ・オン』


Mission Of Burma “ONoffON”

ミッション・オブ・バーマ 『オン・オフ・オン』
発売: 2004年5月4日
レーベル: Matador (マタドール)
プロデュース: Bob Weston (ボブ・ウェストン)

 マサチューセッツ州ボストン出身のバンド、ミッション・オブ・バーマの2ndアルバム。ミックスとレコーディング・エンジニアを務めたのは、シェラック(Shellac)やヴォルケーノ・サンズ(Volcano Suns)の活動でも知られるボブ・ウェストン。

 1979年に結成され、1982年に1stアルバム『Vs.』をリリース。しかし、翌年にギター担当のロジャー・ミラー(Roger Miller)の耳鳴り悪化のため、解散してしまったミッション・オブ・バーマ。彼らが再結成し、22年ぶりにリリースされたアルバムが、本作『ONoffON』です。

 1枚のアルバムのみを残し、なかば伝説化していたミッション・オブ・バーマ。22年ぶりのリリースとなる本作ですが、攻撃性と知性の同居するアンサンブルとサウンドを持った、良盤です。

 激しく歪んだギターや、初期衝動を吐き出すようなボーカルには、アングラ感も漂うものの、フレーズやアレンジの端々には知性と緻密さも感じさせます。

 すべての楽器の音が、テンション高く荒削りかつ、独特の濃密な耳ざわりを持った作品なのですが、特にギターは激しく歪んだサウンドでコードをかきならし、時間と空間を埋めていきます。

 前述したようにギタリストの耳鳴りの悪化が解散の原因となったわけですが、このテンションとサウンドを実現させるには、相当な音量でライブやレコーディングに臨んでいたことが、想像できます。

 幸運なことに音源で聴く場合には、自分の好きな音量で再生できますが、小さい音で再生したとしても、彼らのテンションは感じることができるでしょう。

 このアルバムも良い作品だと思いますが、個人的には3作目の『The Obliterati』の方が好きです。『The Obliterati』の方が、より厚みのあるサウンド・プロダクションを実現しています。





Mission Of Burma “The Obliterati” / ミッション・オブ・バーマ『ジ・オブリテラティ』


Mission Of Burma “The Obliterati”

ミッション・オブ・バーマ 『ジ・オブリテラティ』
発売: 2006年5月23日
レーベル: Matador (マタドール)
プロデュース: Bob Weston (ボブ・ウェストン)

 マサチューセッツ州ボストン出身のバンド、ミッション・オブ・バーマの3rdアルバムです。

 1979年に結成され、1982年に1stアルバム『Vs.』をリリースするものの、翌年にギタリストのロジャー・ミラー(Roger Miller)の耳鳴り悪化のため、解散するミッション・オブ・バーマ。彼らが2002年に再結成後、『ONoffON』のリリースに続き、2枚目のリリースとなるのが本作『The Obliterati』です。

 音圧が圧倒的に高いというわけではないのに、とにかく音が濃密で、迫力ある音像を持ったアルバムです。空気を揺るがすように響くドラム、ファットでコシのある音色のベース、曲によって変幻自在のディストーション。サウンドを聴かせるギター。各楽器の音が、どれも生々しく、臨場感を持って響きます。

 いわゆるドンシャリなサウンドではなく、全音域にわたって音が埋め尽くされているような、分厚いサウンドをバンド全体で作り上げていきます。演奏もスピード重視の直線的なものではなく、随所に知性を感じるアンサンブル。

 1曲目の「2Wice」。イントロのドラムの音がパワフルかつ立体的で、スタジオの空気の揺れまで伝わってくるかのよう。アルバムの幕開けにぴったりの1曲です。その後に入ってくるギターとベースの音にも、分厚い量感があり、バンドの音が時間と空間を埋め尽くします。

 3曲目の「Donna Sumeria」は、各楽器が分離して絡み合うイントロから、やがてひとつの塊のようなサウンドを形成。バンドのリズムと、ボーカルのメロディーが連動するような構造も、楽曲の躍動感を増幅しています。

 9曲目の「Careening With Conviction」は、ラフさとタイトさのバランスが抜群のリズム隊に、ギターが絡みつく1曲。最初はそれぞれ分離して認識できたいた各楽器のサウンドが、いつのまにか混じり合い、ひとつの塊のように感じられる展開も、かれらの音楽の特徴だと思います。

 とにかく音がかっこいいアルバムです。前述したとおり、僕は1曲目「2Wice」のドラムの音でノックアウトされます。

 ギターの音作りも、基本的には歪んでいるのですが、実に多彩なサウンド・カラーを使い分けています。アンサンブルも、ロックのダイナミズムと知性が共存した、非常にクオリティの高いものだと思います。

 日本での知名度はいまいちですが、もっと評価されていいバンドであり、アルバム。