The Advantage “The Advantage” / アドバンテージ『アドバンテージ』


The Advantage “The Advantage”

アドバンテージ 『アドバンテージ』
発売: 2004年4月6日
レーベル: 5 Rue Christine (5ルウ・クリスティーン)
プロデュース: Eric Broyhill (エリック・ブロイヒル)

 1998年に、カリフォルニア州ネバダシティで結成されたバンド、アドバンテージの1stアルバムです。

 マスロック・バンド、ヘラ(Hella)のギタリスト、スペンサー・セイム(Spencer Seim)がドラマーとして参加していることもあり、ヘラ関連のバンドとして紹介されることもありますが、それよりも任天堂ファミコンのゲーム音楽を、ロックの形式でカバーするバンドとして有名。

 アドバンテージのような音楽は、ニンテンドーコア(Nintendocore)、ニンテンドー・ロック(Nintendo rock)とも呼ばれ、一部に熱狂的なファンがいるようです。日本で言えば「歌ってみた」的なノリなのでしょうか(笑) ちなみにアドバンテージは、日本ツアーを行ったこともあります。

 今作も、スーパーマリオやボンバーマンなど、ファミコンの名作の音楽を、26曲収録した作品。前述したとおり、ヘラのスペンサー・セイムが参加しているのも示唆的で、非常にテクニックがあり、緻密なアンサンブルを構築するバンドです。8bitのファミコン音楽が、マスロック的なテクニックによって、現代に鮮やかに蘇る1枚です。(「現代」と言っても、このアルバムが発売されたのは2004年で、すでにけっこう時間が経っていますが…)

 アルバム1曲目を飾るのは「Megaman 2 – Flashman」。メガマンっていきなり知らないソフトだと思いましたが、日本語のタイトルは「ロックマンワールド2」です。このアルバムの曲目表記は、ゲームのタイトル、曲のタイトル、という並びで表記されています。「ロックマンワールド2」の「フラッシュマン」のテーマ曲ということです。

 タイトなリズム隊に、ギター2本が緻密に絡み合うアレンジ。正直、僕はほとんどゲームをやらないので、原曲にはなじみが無いのですが、コンパクトにまとまったマスロックといった趣の1曲です。ちなみの「ロックマンワールド2」は、ファミコンではなくゲームボーイで発売されたソフトのようですね。

 2曲目は「Double Dragon II – Mission 2 At the Heliport」。こちらは日本語だと「双截龍II」。メロディアスなベースラインに、2本のギターが乗り、1曲目に近いコンパクトなアレンジです。

 4曲目は「Bubble Bobble – Theme」(バブルボブル)。こちらのゲームのメインテーマのようです。2本のギターとベース、ドラムにより、立体的なアンサンブルが展開される1曲。

 7曲目「Bomberman II – Areas 1,3 & 5」(ボンバーマンII)。リズムの加速と減速があり、メリハリのついたタイトなアンサンブル。ドラムのリズムも複雑で、ファミコン音楽のポップでかわいい耳ざわりでありながら、マスロックの顔が見え隠れする1曲です。

 18曲目は「Super Mario Bros. 3 – Underworld」(スーパーマリオブラザーズ3)。この曲は、さすがに僕でも知っていました。「Underworld」というタイトルですが、土管に入って地下で流れるあの曲です。ドラムが余裕を持ってリズムをキープし、その上にギターとベースが、正確にメロディーを刻んでいきます。ギターとベースの多層的なアレンジは、原曲を知らなくともかっこいいと思います。

 19曲目「Blaster Master – Stage 2」(超惑星戦記メタファイト)。「Stage 2」とのことですが、ボス戦のような疾走感と緊張感のある曲です。

 全部で26曲収録のアルバムですが、多くの曲が2分以内の長さのため、全体の収録時間は42分弱です。僕はあまりゲームをやらない、なおかつファミコン世代でもないので、知らない曲が多かったのですが、それでもネタ的な意味でなく、純粋にかっこいい楽曲群です。もちろん、話のネタとして聴いても、損は無いアルバムだと思います。

 オリジナルのファミコン音源は、同時発音数も限られ、音楽を鳴らす条件としては非常に厳しいものであったと思いますが、こうして別の形式でアレンジされたものを聴いてみると、メロディーが持つ強度の高さを感じます。きっと当時の作曲家(ソフトによってはプロの作曲家ではなかったかもしれません)の方たちは、限られた条件下で、ゲームを演出するため、努力と知恵を絞って作曲されていたのだろうと想像します。

 元のゲームに思い入れがあろうとなかろうと、面白い作品であることは確かです。ヘラのスペンサー・セイムが参加している別プロジェクトとして聴いても、十分に楽しめますよ!