Shrimp Boat “Cavale” / シュリンプ・ボート『カヴァル』


Shrimp Boat “Cavale”

シュリンプ・ボート 『カヴァル』
発売: 1993年4月1日
レーベル: Bar/None (バーナン)

 1987年にシカゴで結成されたバンド、シュリンプ・ボートの4thアルバムであり、ラスト・アルバム。ここまでの3枚を順番に挙げると『Speckly』『Volume One』『Duende』で、これ以前にもカセット音源をいくつかリリースしています。また2004年には、1986年から1993年までの音源を収録したコンピレーション『Something Grand』を発売。こちらは現在、配信でも購入できます。

 本作『Cavale』は、アメリカではBar/None、イギリスではラフ・トレード(Rough Trade)、日本ではジャズやラテンのリイシューを数多く手がけるボンバ・レコードからリリース。

 のちにザ・シー・アンド・ケイク(The Sea and Cake)の結成に参加するサム・プレコップ(Sam Prekop)とエリック・クラリッジ(Eric Claridge)がメンバーだったシュリンプ・ボート。多種多様な音楽を飲み込みながら、耳なじみの良いギター・ロックに仕上げるセンスは、ザ・シー・アンド・ケイクに繋がると言っていいでしょう。

 最後のアルバムとなった本作では、フリージャズや現代音楽を感じさせるアヴァンギャルドな空気も振りまきながら、軽やかでカラフルな音楽を響かせます。アレンジには多分に実験的な要素も含むのですが、どこか牧歌的でカントリー色を感じさせるところも魅力。

 1曲目「Pumpkin Lover」は、バンド全体が緩やかに、軽やかにグルーヴしていく1曲。リズムには複雑なところもあるのですが、ややローファイで純粋無垢なサウンドが、牧歌的でかわいい雰囲気をかもし出します。どこか、とぼけた感じのボーカルも、良い意味での軽さをプラスしています。

 2曲目「Duende Suite」は、減速と加速をくり返しながら、駆け抜けていく1曲。小刻みで、せわしないリズムからは、カントリーの香りが漂いますが、前述したとおり速度を切り替えながら進むアレンジからは、カントリーだけにとどまらない実験性が伝わります。

 4曲目「Blue Green Misery」は、各楽器が緩やかに弾むようなリズムを刻み、バンド全体も立体的にグルーヴしていく1曲。聴いていると自然に体が動き出すような躍動感がありますが、強すぎず弱すぎず、非常に心地いい1曲です。

 5曲目「What Do You Think Of Love」は、一聴するとぶっきらぼうにも聞こえるドラムが、絶妙にタメを作りながらリズムをキープしていきます。その上にギターとサックス、ボーカルが乗り、いきいきとしたグルーヴが形成。エレキ・ギターのフレーズが、サウンドとアンサンブルの両面でアクセントになっています。

 6曲目「Swinging Shell」は、ギターを中心に、各楽器が緩やかに絡み合う1曲。裏声を使ったボーカルも、やわらかな雰囲気を演出。

 7曲目「Creme Brulee」は、サックスも使用され、音数が多く、立体的なアンサンブルが展開される1曲。いくつもの歯車が複雑に、しかしきっちりと噛み合ったような心地よさのある曲です。ドラムのソリッドな音色と、立体的なリズムが全体を引き締めています。

 9曲目「Free Love Overdrive」。イントロのハーモニーが奇妙な響きを持っていますが、聴いているうちに、その不協和音のような不安定な雰囲気が、クセになっていきます。曲全体としては、実験性が強く聴きづらい印象は全くなく、カラフルでポップな1曲です。まさにアヴァン・ポップと呼ぶべき1曲。

 11曲目「Apples」は、ゆったりとしたテンポに乗せて、サックスとギターがムーディーなフレーズを奏でる、ジャズの香り立つ1曲。

 12曲目「Smooth Ass」も、ゆっくりなテンポで、緩やかなグルーヴが展開される曲。音数は少ないのですが、ヴェールが空間を包むような、穏やかなサウンドと雰囲気を持った1曲です。

 15曲目「Henny Penny」は、イントロから鳴り響くドラムの音に臨場感があり、印象的な1曲。ギターとベース、ボーカルも、ゆったりと絡み合い、有機的なアンサンブルを作りあげます。

 アルバム全体を通して、ジャズやカントリーなど様々なジャンルの香りを漂わせつつ、決して難解な印象にはならず、カラフルで良い意味で軽いギター・ロックを響かせています。実験性とポップさのバランスが秀逸で、9曲目の「Free Love Overdrive」の部分でも書きましたが、アヴァン・ポップと呼びたくなる作品です。

 非常にポップでありながら、実験性も持ち合わせていて、聴くごとに味が出てくる、奥深いアルバムだと思います。