Polvo “Exploded Drawing”
ポルヴォ 『エクスプローデッド・ドローイング』
発売: 1996年4月30日
レーベル: Touch And Go (タッチ・アンド・ゴー)
プロデュース: Bob Weston (ボブ・ウェストン)
ノースカロライナ州チャペルヒル出身のバンド、ポルヴォの3rdアルバム。前作までは、彼らの地元チャペルヒルのレーベル、マージからのリリースでしたが、今作からはシカゴのタッチ・アンド・ゴーへ移籍。レコーディング・エンジニアは、前作に引き続きボブ・ウェストンが担当しています。
ノイズ・ロック・バンドと言われることも多いポルヴォ。前作までの2枚のアルバムも、奇妙なサウンドや複雑なアレンジを、アンサンブルに溶け込ませ、アヴァンギャルドかつポップな音楽を、作り上げていました。
3作目となる本作でも、これまでに引き続き、アンサンブルを重視した、アヴァンギャルドなロックが展開。前作までとの差異を挙げると、サウンド・プロダクションの面で、ローファイ要素を持っていたこれまでと比較して、サウンドがソリッドに、より輪郭がくっきりしています。
1曲目「Fast Canoe」は、イントロからギターが奇妙なフレーズを繰り返し、立体感のあるアンサンブルが展開されます。特にドラムの音は生々しいサウンドでレコーディングされており、全体としても空間の広がりが感じられる音作りになっています。
2曲目「Bridesmaid Blues」は、弦がゆるくチューニングされたようなギターが、足がもつれながら走っていくような、疾走感あふれる1曲。不安定なギターの音程と、タイトなアサンサンブルが、アンバランスなようで、不可分に溶け合い、違和感がありません。
3曲目「Feather Of Forgiveness」も、ギターの音色とフレーズが印象的。まるで、壊れた機械か何かのような、鋭くジャンクなサウンドを響かせます。アームを使っているのか、ところどころで聞こえる揺らめく音程も、単なる飛び道具ではなく、効果的に楽曲の深みを増しています。
4曲目「Passive Attack」は、リズムもサウンドも、民族音楽を感じせるインタールード的な役割の1曲。アメリカーナではなく、民族音楽です。無国籍性を感じるところも、このバンドの魅力。
7曲目「Street Knowledge」は、シタールらしき音色のイントロから、下品に歪んだギターが唸る、ジャンクなアンサンブルが展開。ノイジーなサウンドと、エスニックな雰囲気が溶け合い、独特のサイケデリアを醸し出します。
8曲目「High-Wire Moves」は、イントロから激しく歪んだギターが煽動的に響き、前のめりに疾走するガレージ・ロック。ですが、再生時間0:35あたりからテンポを落とし、今度はロングトーンをいかしたアレンジへ。その後もテンポを切り替え、1曲の中でのコントラストが鮮烈。
13曲目「The Purple Bear」は、かすれた歪みのギターと、うねるような奇妙な音色のギターが絡み合う1曲。
ギターの音作りを筆頭に、耳につく奇妙なサウンドが随所に用いられていますが、アンサンブルにはメリハリと躍動感があり、一般的なロックが持っているダイナミックなかっこよさも、十分に感じられるアルバムです。
ポルヴォは、アヴァンギャルドな要素と、わかりやすくかっこいい要素の組み合わせ方が、本当に秀逸。ボブ・ウェストンによるレコーディングも、バンドのサウンドを生々しく閉じ込めていると思います。