Tears Run Rings “Always, Sometimes, Seldom, Never”
ティアーズ・ラン・リングス 『オールウェイズ、サムタイムズ、セルダム、ネヴァー』
発売: 2008年4月8日
レーベル: Clairecords (クレアコーズ)
1990年代中頃より活動するジ・オートクランツ(The Autocollants)というバンドを前身に、2006年に結成されたシューゲイザー・バンド、ティアーズ・ラン・リングスの1stアルバム。シューゲイザー専門レーベル、クレアコーズからのリリース。
ギターとボーカル担当のマシュー・バイス(Matthew Bice)と、ベースとボーカル担当のローラ・ワトリング(Laura Watling)による男女混声ボーカルが、耽美で浮遊感のあるメロディーを紡いでいく本作。
各楽器のサウンドともエフェクト過多ではなく、分離して聞き取れるバランス。しかし、ボーカルもバンド・アンサンブルの一部のように溶け合うサウンド・プロダクションは、歌メロやバンドのグルーヴ感よりも、音響を前景化するシューゲイザー的なアプローチと言えます。
2曲目「How Will The Others Survive?」では、鼓動を打つようなバスドラに、ギターが多層的に多い被さり、ささやき系の男女混声ボーカルが重なります。完全にバンドが一体化するのではなく、リズム隊、ギター、ボーカルと、分離して聞き取れるサウンドとバランスを維持しながら、レイヤー状に音楽を構成。
3曲目「Beautiful Stranger」は、シンプルなリズム隊の上に、空間系エフェクターの深くかかったギターと、毛羽立った歪みのギター、柔らかなボーカルが重なり、幻想的な雰囲気を作り出す1曲。ゆったりしたテンポの上で、メロディーとサウンドが際立つバランスには、音楽に身を委ねる心地よさが溢れています。
4曲目「Fall Into Light」は、テンポは速くないものの、ビートがはっきりしていて、ゆるやかな躍動感と疾走感のある1曲。ノリノリのロックとは違いますが、風のように自然に流れていく音楽には、ゆるやかに体を揺らす魅力があります。
7曲目「Waiting For The End」は、イントロからドラムが立体的に響き、浮遊感を持った各楽器とボーカルが絡み合い、アンサンブルを構成していきます。バンド感のあるアンサンブルと、エレクトロニカや音響系ポストロックを思わせる、アンビエントな音像が共存した1曲。
10曲目「Send Me Back」は、毛羽立った歪みのギターと、耽美なボーカルが、不釣り合いなようでありながら、自然に溶け合い、ゆるやかなグルーヴ感のあるロックが展開されます。
幻想的な空気を持った、ささやき系の男女混声ボーカルと、エフェクターを駆使したギター・サウンドが同居し、歌メロと音響の魅力が不可分の溶け合った作品。
サウンドの面でも、アンサンブルの面でも、音楽を作り上げる要素に一体感があり、実にシューゲイザーらしい1作であると思います。
音響的なアプローチの「Happiness – Part One」から始まり、「Happiness – Part Two」で締めくくるアルバム全体の流れも、なかなか秀逸。