The Babies “Our House On The Hill” / ザ・ベイビーズ『アワー・ハウス・オン・ザ・ヒル』


The Babies “Our House On The Hill”

ザ・ベイビーズ 『アワー・ハウス・オン・ザ・ヒル』
発売: 2012年11月13日
レーベル: Woodsist (ウッドシスト)
プロデュース: Rob Barbato (ロブ・バルバート)

 フォーク・ロック・バンド、ウッズのベーシストとしても知られるケヴィン・モービー(Kevin Morby)と、ガールズ・パンク・バンド、ヴィヴィアン・ガールズ(Vivian Girls)のギター・ボーカルとしても知られるキャシー・ラモーン(Cassie Ramone)。

 そんな2人が中心となって結成されたバンド、ザ・ベイビーズの2ndアルバム。前作『The Babies』は、カリフォルニア州のレーベル、Shrimperからのリリースでしたが、本作はウッズのメンバーが設立したレーベル、 Woodsistからのリリース。

 ローファイ風味のロックが展開された1stアルバムの『The Babies』から比較すると、アンサンブルはややタイトに、またコーラスワークとギターの使い方は、時にギターポップを彷彿とさせるほど、ポップでカラフルになっています。

 ただし、ギターのサウンドは、アンプ直結で作り上げていると思われる、チャラチャラとしたシンプルで飾り気のない音作り。音色ではなく、アンサンブルと曲調によって、楽曲ごとに異なるカラーを生み出しています。

 本作では4人のメンバーに加えて、ティム・プレスリー(Tim Presley)がギターとオルガンで数曲に参加。6曲目「Mean」にはサックス、12曲目「Wandering」にはチェロが加わっています。また、プロデューサーを務めたロブ・バルバートも、一部の曲でオルガンを弾いており、人数と楽器の数の面でも、前作より増加。音数が増えたことも、アルバムの多彩さの一助になっていると言えるでしょう。

 3曲目「Mess Me Around」は、2本のギターが絡み合うように疾走していく、コンパクトにまとまったロック・チューン。ケヴィンのクールでややざらついたボーカルからは、ガレージの香りも漂いますが、ギターの音作りは極めてシンプルなクリーン・トーン。若干のアングラ感を持ちながらも、ギターポップのように聴きやすいサウンド・プロダクションとなっています。

 キャシーがメイン・ボーカルを取る5曲目「Baby」は、彼女のアンニュイな声質も相まって、ローファイ風味のドリームポップといった様相の1曲。

 アルバムの最後を飾る12曲目の「Wandering」では、アコースティック・ギターとチェロがフィーチャーされ、ローファイな音質ながら、牧歌的なカントリーと、チェンバー・ミュージックの雰囲気も併せ持つ1曲となっています。

 2018年6月現在、解散は発表していないものの、本作以降にリリースも無く、活動停止状態にあるザ・ベイビーズ。フロントを務めるケヴィン・モービーとキャシー・ラモーンは、それぞれソロで活動しており、両名ともバンドのフロントに立てる優れたミュージシャンです。そんな2人の溶け合う個性が感じられるのも、このアルバムの魅力のひとつ。