Califone “Roots & Crowns” / キャリフォン『ルーツ・アンド・クラウンズ』


Califone “Roots & Crowns”

キャリフォン 『ルーツ・アンド・クラウンズ』
発売: 2006年10月10日
レーベル: Thrill Jockey (スリル・ジョッキー)

 イリノイ州シカゴ出身のポストロック・バンド、キャリフォンの2006年作のアルバム。

 生楽器を多用したオーガニックなサウンドに、ノイズ的な電子音やエレキ・ギターを溶け込ませ、まさに「ポスト」な音楽を作り続けるキャリフォン。本作でも、伝統と実験がバランスよくミックスされた音楽を展開しています。

 1曲目「Pink & Sour」は、トライバルなパーカッションのリズムと歌のメロディーが、ジャンクなエレキ・ギターや電子音と共に、ポストロック的な手法でまとめあげられた1曲。ポスト民族音楽とでも呼びたくなるような、伝統音楽とテクノロジーが融合した曲です。

 2曲目「Spiders House」は、各楽器ともナチュラルな音作りで、シンプルなリズムを刻んでいく、穏やかな1曲。ですが、そこからはみ出るリズムと音が随所にあり、アヴァンギャルドな空気も持ち合わせています。

 5曲目「A Chinese Actor」では、イントロから、ラジオの音を拾ったようなノイズと、民族音楽的な雰囲気のリズムが溶け合います。躍動感のある立体的なアンサンブルの中で、ジャンクでノイジーな音色がダイナミズムを加え、楽曲の奥行きを増しています。ロックにおいて、激しく歪んだギターがエキサイトメントを増加させるように、民族音楽的なサウンドに、パワフルな音をプラス。この曲もポスト民族音楽と呼びたくなる1曲。

 8曲目「The Orchids」は、穏やかなアコースティック・ギターとボーカルを中心に据え、多様なサウンドによる断片的なフレーズが折り重なっていく1曲。全体のサウンド・プロダクションも、生楽器が前面に出たオーガニックなものですが、レコーディング後の編集を感じさせる「ポスト」な耳ざわりも同居し、楽曲に現代的な雰囲気を加えています。

 10曲目「Black Metal Valentine」は、このアルバムの中にあって、特に実験性の濃いサウンドとアレンジの1曲。バラバラに解体されたフレーズが、後から再構築されたような、ポスト・プロダクションを強く感じさせる曲です。ノイズ的な電子音も多用されていますが、楽器のフレーズと巧みにブレンドされ、有機的にサウンドを作り上げています。

 12曲目「3 Legged Animal」は、アコースティック・ギターと歌がアンサンブルの中心にある、牧歌的な雰囲気の1曲。しかし、徐々にノイジーなサウンドが加わり、楽曲に立体感が増していきます。

 生楽器のナチュラルで穏やかなサウンドと、一般的にはノイズと思われる電子音やディストーション・ギターが溶け合い、一体感のある音楽を作り上げるアルバムと言えます。何度か記述したとおり、民族音楽のようなリズムやメロディーが、電子音やエレキ・ギターなどのオルタナティヴな音色と溶け合い、楽曲の幅と深みを格段に増しています。

 「オルタナ・カントリー」や「フリーク・フォーク」というジャンル名がありますが、本作は「オルタナ民族音楽」「ポスト民族音楽」などと呼びたくなる音楽性とサウンドを持った1作です。