Califone “All My Friends Are Funeral Singers” / キャリフォン『オール・マイ・フレンズ・アー・フューネラル・シンガーズ』


Califone “All My Friends Are Funeral Singers”

キャリフォン 『オール・マイ・フレンズ・アー・フューネラル・シンガーズ』
発売: 2009年10月6日
レーベル: Dead Oceans (デッド・オーシャンズ)

 シカゴ出身のポストロック・バンド、キャリフォンの2009年作のアルバム。前作までは、地元シカゴの名門インディペンデント・レーベル、スリル・ジョッキーからのリリースでしたが、本作からインディアナ州ブルーミントンを拠点にするレーベル、デッド・オーシャンズへ移籍。(並行して、メンバーのティム・ルティリとベン・マサレラが設立したレーベル、ペリシャブル(Perishable Records)からのリリースもありましたが。)

 アコースティック・ギターを基調としたルーツ・ミュージックを感じさせるサウンドと音楽性に、ノイジーな電子音やエレキ・ギターを用いて、実験性を溶け込ませるのがキャリフォンの特徴。本作でも、フォークやカントリーなどのルーツ・ミュージックを思わせるサウンドに、アヴァンギャルドな音が隠し味のように溶け込み、深みのある音楽を作り上げています。

 1曲目「Giving Away The Bride」は、シンプルなリズム・パターンに乗せて、やや物憂げなボーカルが淡々とメロディーを紡いでいく1曲。基本のパターンは延々と繰り返しが続き、楽曲構造としてはシンプル。しかし、多種多様な断片的なフレーズとリズムが飛び交い、多彩なサウンドが織り込まれた曲でもあります。

 2曲目「Polish Girls」は、ミニマルなパーカッションのイントロから始まり、アコースティック・ギターと歌のみの前半から、徐々に楽器が増え、広々としたサウンドが展開される1曲。音数が増えるのと比例して、躍動感も増していきます。

 3曲目「1928」は、アコースティック・ギターと、乾いたパーカッションの音、アヴァンギャルドな空気を振りまく電子音が、ゆるやかに絡み合い、アンサンブルを構成。ささやき系の穏やかなボーカルを含め、牧歌的な雰囲気の曲ですが、さりげなく用いられる奇妙なサウンドが、楽曲に色を与えています。

 6曲目「Buñuel」は、アコースティック・ギターとボーカルを中心にしたイントロから、エレキ・ギターやストリングスが波のように折り重なり、厚みのあるアンサンブルを組み上げていきます。スウィングしながら前進していく、カントリー色の濃い1曲。

 7曲目「Ape-like」は、軽快なリズムと立体的なアンサンブルを持った、ノリの良い1曲。特に低音域のドラムが地面を揺らすように鳴り響き、バンド全体もダンサブルに躍動していきます。

 10曲目「Alice Marble Gray」は、手数を絞ったシンプルなドラムのビートと、ギターのミニマルな反復フレーズが、淡々と演奏を続けていきます。

 12曲目「Krill」は、ゆったりとテンポに乗せて、徐々に広がるようにアンサンブルが展開していく1曲。生楽器主体のオーガニックなサウンド・プロダクションですが、随所で効果的に用いられるエレキ・ギターと電子音が、オルタナティヴな空気とダイナミズムをプラス。再生時間1:03あたりからの木琴による細かい音粒、1:54あたりからのダイナミックな盛り上がりなど、段階的にシフトを上げていきます。

 アコースティックな音色を基調としながら、電子音とディストーション・ギターが効果的に用いられ、アルバム全体をカラフルに彩っています。フレーズやサウンドのみを取り出すと、実験性が強いのですが、楽曲の中に心地よい違和感として、見事に溶け込ませています。

 アルバム毎に音楽性が若干異なるキャリフォンですが、伝統と実験性を巧みにブレンドするセンスは常に秀逸。毎作、安定したクオリティの作品を作り続けていると思います。

 2018年6月現在、Spotifyではデジタル配信されていますが、AppleとAmazonでは未配信です。