Ryley Walker “Golden Sings That Have Been Sung”
ライリー・ウォーカー 『ゴールデン・シングス・ザット・ハヴ・ビーン・サング』
発売: 2016年8月19日
レーベル: Dead Oceans (デッド・オーシャンズ)
プロデュース: LeRoy Bach (リロイ・バック)
イリノイ州ロックフォード出身のシンガーソングライターでありギタリスト、ライリー・ウォーカーの3rdアルバム。前作『Primrose Green』に引き続き、インディアナ州ブルーミントン拠点のインディペンデント・レーベル、デッド・オーシャンズからのリリース。
過去2作は、ライリー・ウォーカーのフィンガースタイル・ギターを中心に据えた、アコースティックなサウンドを持った作品でした。本作でも彼のギタープレイは健在ですが、よりアンサンブル志向が強まり、サウンド・プロダクションの面でも、多様な楽器が用いられ、多彩さを増した1作になっています。
1曲目「The Halfwit In Me」は、ギターとクラリネットによるイントロに導かれ、ゆるやかにスウィングするアンサンブルが展開される1曲。バンド全体がひとつの生命体であるかのような、躍動感と生命力を感じる演奏。
2曲目「A Choir Apart」は、ドラムの立体的で生楽器らしいサウンドと、シンセサイザーと思しき電子的なサウンドが溶け合い、ルーツ・ミュージックの香りを漂わせながら、同時に現代性を持ち合わせています。手数を絞りながらもスウィング感を生み出すドラムと、ベースのリズムの取り方からは、ジャズの香りも漂います。
5曲目「I Will Ask You Twice」は、ギターとボーカルのみで構成された、牧歌的で穏やかな1曲。しかし、音が足りないと感じることはなく、ボーカルと複数のギターが有機的に絡み合いながら、アンサンブルを作り上げていきます。
6曲目「The Roundabout」は、5曲目に引き続き、アコースティック・ギターがフィーチャーされた1曲。こちらには他の楽器も用いられ、カントリーを下敷きにした穏やかなサウンドを用いて、ゆるやかに躍動する演奏が繰り広げられます。高音域の柔らかなキーボードの音色がアクセント。
8曲目「Age Old Tale」は、様々な楽器の音が聞こえるミニマルなイントロから始まり、ゆったりとしたテンポに乗せて、穏やかな海のように揺れるアンサンブルが展開される1曲。リズム隊の刻むリズムはジャズ的なスウィング感を伴い、楽曲に立体感をもたらしています。
ライリー・ウォーカー自身は、フォークやカントリーを主な影響源に持つギタリストなのだと思いますが、前作に引き続きジャズ畑のベースのアントン・ハトウィッチ(Anton Hatwich)、ドラムのフランク・ロザリー(Frank Rosaly)が参加。彼らの参加が、本作にジャズの空気を持ち込み、多彩さの一端になっているのは事実でしょう。
また、本作でプロデューサーを務める、元ウィルコ(Wilco)のリロイ・バック(LeRoy Bach)の貢献も見逃せません。リロイ・バックはプロデュース以外にも、ギター、ピアノ、クラリネット、パーカッション、ラップ・スティール・ギターなど、レコーディングで実に多くの楽器を演奏しており、本作のカラフルな作風を実現する、大きな要因となっているはずです。
ライリー・ウォーカーのソロ名義で3作目のアルバムとなる本作は、これまでのフォーキーなサウンドと音楽性を引き継ぎながら、サウンドと音楽性の両面で、より多彩さと広がりを見せた1作です。