Dwarves “Thank Heaven For Little Girls” / ドワーヴス『サンク・ヘヴン・フォー・リトル・ガールズ』


Dwarves “Thank Heaven For Little Girls”

ドワーヴス 『サンク・ヘヴン・フォー・リトル・ガールズ』
発売: 1991年11月1日
レーベル: Sub Pop (サブ・ポップ)
プロデュース: Mr. Colson (ミスター・コルソン)

 イリノイ州シカゴ出身のバンド、ドワーヴスの1991年にリリースされた3rdアルバム。1999年には、本作と次作『Sugarfix』を1枚に収めたコンピレーション盤が発売。2018年8月現在、各種サブスクリプション・サービスでも、1999年発のコンピ盤が配信されています。

 ざらついたサウンドと疾走感あふれるアレンジが前面に出た、ガレージ・ロック色の濃い前作『Blood Guts & Pussy』と比較すると、よりアレンジの幅が広がった本作。前作も、ただ直線的なリズムで走るだけではなく、随所にフックとなるアレンジが施されていましたが、本作ではさらに凝ったアレンジが増加しています。

 同時に、悪ノリとも言える、おどろおどろしいサウンドや歌詞は全く損なわれておらず、ノイズ・ロック的な一面を好む方にも、受け入れられるアルバムです。

 1曲目の「Satan」では、イントロにオルガンが用いられ、サウンド面でも広がりを見せています。しかし、ヴォーコーダーを用いたらしい、悪魔のうめき声のようなコーラスも入っており、アングラ臭も漂う1曲です。

 4曲目「Blood Brothers Revenge」は、細かくリズムが刻まれる、テンポの速い1曲ですが、スライド・ギターが楽曲に滑らかさをプラス。ハードコア一辺倒にはならず、ポップなテイストも感じられる曲に仕上がっています。

 5曲目「Blag The Ripper」は、硬質なベースと、激しく歪んだギター、立体的なドラムが絡み合い、アンサンブルが展開されます。スピード重視の疾走感よりも、コントラストとグルーヴ感を重視した曲。ムチで叩く音や、悲鳴のような声が、奥の方で鳴り響き、アングラ感もプラス。

 10曲目「Three Seconds」は、各楽器が一体感を持って疾走する、テンポが速く、コンパクトにまとまったパンク・チューン。「カチカチ」という時限爆弾のカウント音のようなイントロから、ラストまで1分ほど。イントロとラストのサウンドにも、このバンドらしい遊び心があります。

 11曲目「Fuck Around」は、厚みのある歪むのギターと、メロディアスなボーカルが前面に出た、ポップでメロコア色の濃い1曲。ノリの良いリズムと、爽やかなコーラスワークからは、カントリーの香りも漂います。

 パンクを下敷きにしながら、曲によってはハードコア色が濃く、曲によってはメロコア色が濃く、といった具合に多彩な曲が収録された1作。

 疾走感の点では、前作の方が上回りますが、楽曲とアレンジの多彩は、本作の方が確実に上回っています。このバンド得意の悪趣味なサウンドやアレンジも散りばめられ、良い点は失わずに、音楽性の幅を広げたと言えるでしょう。