Kurt Vile “Smoke Ring For My Halo”
カート・ヴァイル 『スモーク・リング・フォー・マイ・ハロ』
発売: 2011年3月8日
レーベル: Matador (マタドール)
プロデュース: John Agnello (ジョン・アグネロ)
The War On Drugsの元メンバーとしても知られる、ペンシルベニア州出身のミュージシャン、カート・ヴァイルのソロ名義としては4作目のアルバム。
カート・ヴァイルの音楽を聴くといつも感じるのは、ギター・サウンドの多彩さ。同時に、歪みでもクリーントーンでもアコースティックギターでも、どこかジャンクな響きを残していること。また、多種多様なサウンドなのに、どこかローファイな雰囲気は共通して持っています。
ギターの音色だけではなく、サウンド・プロダクション全体にも彼独特のジャンクでサイケデリックな雰囲気が充満していて、彼特有のこだわりと方法論があることが垣間見える作品でもあります。
本作は、彼得意のディストーションギターは控えめに、アコースティック・ギターとクリーントーンのギターが中心に据えられていながら、実に多彩なギター・サウンドが響きます。
1曲目の「Baby’s Arms」は、アコースティック・ギターのまわりに電子音がまとわりつくような、幻想的なアレンジ。アコースティック・ギターによる弾き語り中心のアレンジなのに、浮遊感のある音が飛び交い、サイケデリックな雰囲気も漂う1曲です。
2曲目の「Jesus Fever」では、コーラスなどの空間系のエフェクターを使っているのでしょうが、立体感と濁りのあるクリーントーンのギターが聴こえます。みずみずしさの中に、わずかに不穏な空気が含まれたようなサウンド。
6曲目「Runner Ups」は、弾力性を感じるアコースティック・ギターのサウンドと、そのまわりで鳴る電子音、パーカッションのリズムが、多層的に重なっていく1曲。
7曲目「In My Time」は、打ち込みらしきリズムと、ナチュラルな音色のアコースティック・ギターが響く1曲。本作はアコースティック・ギターも、不思議なサウンドを持った曲が多いのですが、この曲はオーガニックな耳ざわり。流れるようなアンサンブルも心地よい。
ディストーションギターは控えめに、アコースティック・ギターを多用したアルバムながら、単調なサウンドだという印象のないアルバム。カントリーやフォークといったルーツ・ミュージックも感じさせながら、オルタナ・カントリー的な解釈とは異なる、ローファイ感覚を織り交ぜています。「ローファイ・カントリー」といった雰囲気の1枚。