The Afghan Whigs “Up In It” / アフガン・ウィッグス『アップ・イン・イット』


The Afghan Whigs “Up In It”

アフガン・ウィッグス 『アップ・イン・イット』
発売: 1990年4月
レーベル: Sub Pop (サブ・ポップ)
プロデュース: Jack Endino (ジャック・エンディーノ (エンディノ))

 1986年にオハイオ州シンシナティで結成されたバンド、アフガン・ウィッグスの2ndアルバム。1988年の1stアルバム『Big Top Helloween』は、彼らの自主レーベルUltrasuedeからのリリースでしたが、本作『Up In It』は、シアトルを代表するインディー・レーベル、サブ・ポップからのリリース。レコーディングも、当時サブ・ポップのバンドを数多く手がけたジャック・エンディーノが担当。

 ギター・ボーカル担当のグレッグ・デュリ(Greg Dulli)と、ギター担当のリック・マッコラム(Rick McCollum)は、共にR&Bなどのブラック・ミュージックを好んで聴いており、アフガン・ウィッグスを結成して初めて演奏したのは、テンプテーションズの「Psychedelic Shack」とのこと。

 そんなバックボーンもあり、アフガン・ウィッグスの音楽性は、ブラック・ミュージックの要素を持ったロック、ブラック・ミュージックとオルタナティヴ・ロックの融合、などと説明されることがあります。本作も、グレッグ・デュリのソウルフルなボーカルを筆頭に、ブラック・ミュージックからの影響が随所に感じられます。

 当時は、グランジ・オルタナ・ムーヴメントの勃興期。前述したとおり、本作のレコーディングは、ニルヴァーナ『Bleach』やマッドハニー『Mudhoney』を手がけたジャック・エンディーノが担当しており、サウンドは当時のオルタナに近いものです。オルタナ・ブームにおいては、文字通り掃いて捨てるほど多くのバンドがデビューし、そして消えていったのですが、アフガン・ウィッグスは確固とした音楽的志向を持っており、3rdアルバム以降は、よりブラック・ミュージック色を強めた作品をリリースしていきます。

 1曲目「Retarded」は、やや引きずるような、糸を引くようなギターが印象的な1曲。ドラムは比較的シンプルな8ビート、ベースは小節のアタマの音を強調。言語化すると、ブラック・ミュージックからは程遠い音楽のようですが、そこまで強くはないもののファンク色を感じるアレンジです。ボーカルも、抑える部分と感情を解放する部分がはっきりとしていて、ソウルフルに響きます。

 2曲目の「White Trash Party」は、イントロから各楽器が絡み合い、グルーヴ感に溢れた1曲。左チャンネルのワウのかかったギター、右チャンネルの小気味いいディストーション・ギター、メロディアスなベース、タイトなドラムが、立体的なアンサンブルを作り上げていきます。その上に乗るボーカルも、シャウトをしながら雑にはならず、メロディーを紡いでいきます。

 5曲目「Amphetamines And Coffee」は2分弱の短い曲ですが、イントロから段階的に波のようにバンドが躍動し、テンポはそこまで速くはないのに、疾走感があります。だんだん加速していくようにも感じます。

 6曲目「Hey Cuz」は、各楽器がタイトにリズムを刻み、走り抜ける1曲。ギターの小刻みなカッティングと、タイトで正確なリズム隊が、疾走感あふれる演奏を展開します。特にギターのリズムがフックになっており、リスナーの耳を掴んでいきます。

 8曲目「Son Of The South」というタイトルも示唆的ですが、ブルースのスライドギターを思わせるイントロから、立体的なリズムのノリの良いロックンロールが展開されます。リズムを止めてためるところが随所にあり、進行感を強めています。

 本作はレコードとCDで収録曲数が異なり、レコードでは9曲、CDでは13曲収録となっています。1曲目から9曲目までは、前述したとおりジャック・エンディーノによるレコーディング。10曲目から12曲目はウェイン・ハートマン(Wayne Hartman)、13曲目はポール・マハーン(Paul Mahern)によるレコーディングで、おそらく録音時期が違うので、10曲目以降はボーナス・トラック的な意味合いなのでしょう。

 サウンド的には、当時のいわゆるオルタナやグランジの範疇に入る、歪んだギターを用いた、生々しい耳ざわりを持っていますが、リズムにはところどころブラック・ミュージック的な粘り気を感じるアルバムです。当時の他のグランジ・バンドと比較すると、一線を画したオリジナリティを持ったバンドであると言えるでしょう。

 前述したとおり、この後の3枚目以降では、さらにブラック・ミュージックの要素を強めていきます。どちらを好むかは、リスナーの好みによるとしか言えませんが、R&Bやソウルをオルタナティヴ・ロックの枠組みのコンパクトに落とし込んだ本作も、魅力的で優れた作品であると思います。

 





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