Owen “I Do Perceive”
オーウェン 『アイ・ドゥ・パーシーヴ』
発売: 2004年11月9日
レーベル: Polyvinyl (ポリヴァイナル)
キャップン・ジャズ(Cap’n Jazz)やアメリカン・フットボール(American Football)での活動でも知られる、シカゴのポストロック・シーンの中心人物の一人、マイク・キンセラによるソロ・プロジェクト、オーウェンの3rdアルバム。
アコースティック・ギターを多用した、ナチュラルなサウンド・プロダクションの前2作と比較して、エレキ・ギターや電子音の使用頻度が格段に上がった、ということはありませんが、随所に効果的に電子楽器が用いられ、ポストロック色の濃いサウンドになっています。
また、アンサンブルの面でも、3作目ということもあってか、ソロ・プロジェクトでありながら、バンド感の強い演奏が展開。立体的で多彩なアンサンブルが堪能できる作品でもあります。
1曲目「Who Found Who’s Hair In Who’s Bed?」は、鼓動のようなリズムと、透明感のあるみずみずしい音色のアコースティック・ギター、穏やかなボーカルが溶け合う1曲。
2曲目「Note To Self」は、ギターとドラムの紡ぎ出す細かい音符が絡み合うイントロから始まり、立体的で躍動感に溢れたアンサンブルが繰り広げられる1曲。歪んだ音色のエレキ・ギターがアクセントとなり、楽曲に尖ったサウンドを加えています。
3曲目「Playing Possum For A Peek」は、流れるようなアコギのアルペジオに、静かに語りかけるようなボーカルが重なる1曲。
4曲目「That Tattoo Isn’t Funny Anymore」は、イントロから、リズムが伸縮するように、いきいきと躍動するバンド・アンサンブルが展開される1曲。
7曲目「Bed Abuse」は、立体的かつパワフルにリズムを叩くドラム、流れるように音を紡ぎ出すアコースティック・ギター、奥の方で鳴る持続音と、多様な要素が溶け合った、ポストロック色が濃いアンサンブルが繰り広げられます。再生時間1:53あたりからの唸りをあげるディストーション・ギターなど、次々と展開があり、情報量の多い1曲。
8曲目「Lights Out」は、ゆったりとしたリズムに乗せて、たっぷりとタメを作りながら、音数を絞ったアンサンブルが展開。「静と動」というほどにはダイナミズムが大きくはありませんが、少ない音数で鮮やかにコントラストを作り出しています。
前2作と比較して、アンサンブルがより複雑に、幅を広げた作品と言ってよいでしょう。特にアルバム終盤の7曲目と8曲目は、派手さは無いものの、巧みな音の組み合わせによって、未来のロックを感じさせるサウンドを獲得。あらためて、マイク・キンセラの音楽性の幅広さを感じる1作です。
ちなみに通常は8曲収録ですが、and recordsからリリースされた日本盤には、アメリカのロックバンド、エクストリーム(Extreme)のカバー「More Than Words」など、ボーナス・トラックが3曲追加され、計11曲が収録されていました。