Dwarves “Blood Guts & Pussy” / ドワーヴス『ブラッド・ガッツ・アンド・プッシー』


Dwarves “Blood Guts & Pussy”

ドワーヴス 『ブラッド・ガッツ・アンド・プッシー』
発売: 1990年1月1日
レーベル: Sub Pop (サブ・ポップ)
プロデュース: Jack Endino (ジャック・エンディーノ (エンディノ))

 イリノイ州シカゴで結成されたバンド、ドワーヴスの2ndアルバム。1986年の前作『Horror Stories』は、ロサンゼルス拠点のボンプ・レコード(Bomp! Records)傘下のレーベル、ヴォックス・レコード(Voxx Records)からのリリースでしたが、本作からシアトルの名門サブ・ポップへ移籍しています。グランジ・ブームの真っ只中で、多くのバンドを手がけたジャック・エンディーノが、エンジニアを担当。

 ジャンルとしてはガレージ・ロックやハードコア・パンクに分類されるドワーヴス。とにかく勢い重視の演奏と、下品なサウンド・プロダクションが彼らの魅力です。本作も12曲収録ながら、収録時間は13分台という、文字通り勢いで突っ走るアルバム。ガレージ風のシンプルなロックを基本に、時に楽曲のなかで加速しながら走り抜けていきます。

 収録時間がとても短く、全てのトラックが1分程度。しかし、めちゃくちゃにテンポが速いというわけでも、直線的にリズムを刻み続けるわけでもなく、思いのほかアレンジが練り込まれ、コンパクトにまとまったロックンロールが、一貫して鳴らされています。

 ガレージ・ロック的な、ざらついた音像と疾走感を持ち、ボーカルのクセのある歌い方からは、アングラ感が漂います。アルバム全体を通して、ワルノリで押し切るようなところもあるのですが、前述のとおり単純に突っ走るだけでなく、アレンジが凝っていて、意外と真面目なのかな?と感じるところもあり。

 1曲目「Back Seat Of My Car」は、ギターのイントロを皮切りに、リズムが前のめりに走っていく、疾走感あふれる1曲。曲のラストには、車が衝突する音が入り、このバンドらしい遊び心も感じられます。

 2曲目「Detention Girl」は、イントロから前のめりに走っていきますが、再生時間0:37あたりのベースをスイッチにしてテンポを落とし、その後は段階的に再加速。緩急によって加速感を演出する1曲。

 5曲目「Skin Poppin’ Slut」は、毛羽立ったサウンドのギターを中心に、全ての楽器が塊となって転がるような、一体感と疾走感のあるアンサンブルが展開される1曲。

 6曲目「Fuck You Up And Get High」では、シンプルなリフと、シャウト気味のボーカルが、勢いに任せて走り抜けていきます。わずか40秒の曲ですが、演奏時間の短さ以上に、疾走感に溢れ、短い体感の1曲。

 11曲目「Astro Boy」では、ギターは激しく歪み、各弦の分離感のないだんご状のサウンド。リズム隊とも一丸となり、転がるように駆け抜ける演奏が展開されます。

 音も下品なら、ジャケットも下品。しかし、リズムやテンポの切り替えが随所にあり、思ったよりも演奏は練りこまれています。

 とはいえアングラ臭が充満しているのも事実で、音圧の高いハイファイなサウンドのマスロックやハードロックとは、一線を画する耳ざわり。ガレージで鳴らされた音をそのまま閉じ込めたかのような、生々しく歪んだ音で、塊感のあるアンサンブルを展開していく1作です。