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Brokeback “Looks At The Bird” / ブロークバック『ルックス・アット・ザ・バード』


Brokeback “Looks At The Bird”

ブロークバック 『ルックス・アット・ザ・バード』
発売: 2003年1月21日
レーベル: Thrill Jockey (スリル・ジョッキー)

 トータスのダグラス・マッカムがスタートさせたプロジェクト、ブロークバックの2枚目のアルバムです。本作『Looks At The Bird』には、シカゴ・アンダーグラウンドのベーシスト、ノエル・クッパースミスも参加しており、2人のベーシストによるベース推しの1作。

 ジャズの世界では、ベーシストが2人揃う作品というのも散見されますが、インディーロック畑で、ベーシスト2人を中心にした作品というのは珍しいのではないでしょうか。ギター中心の音楽を「ギター・オリエンテッドな」と形容することがありますが、本作は言うなれば「ベース・オリエンテッドなポストロック作品」。

 2本のベースが絡む、低音に重心に置いたアンサンブルが、時にアンビエントな音響を携えながら展開されます。

 2曲目「Lupé」は、ジャングルの中で、様々な動物が不意に飛び出してくるように、多種多様なサウンドが飛び交う1曲。一般的な意味でポップな曲ではないものの、各楽器がオーガニックな響きを持っているためか、不思議と実験的で敷居が高いという印象はありません。後半になってトランペットが登場すると、途端にジャジーな空気が漂います。

 3曲目の「Name’s Winston, Friends Call Me James」は、ゆったりとしたベースの上に、ボーカルやシンセのロングトーンが、レイヤーのように重なるイントロ。そこからドラムがリズムを加えると、立体的な音楽が姿をあらわします。

 7曲目の「The Suspension Bridge At Iguazú Falls」は、ギターとシンセが前景化され、今作の中では、ひときわカラフルな印象を与える1曲。トータス色が濃いアレンジとサウンド・プロダクション。

 前述したとおり、ベースをアンサンブルの中心に据えた作品ではありますが、サウンドと展開は思いのほかバラエティに富んでいて、単調な印象はあまりありません。(全くないとは言えない…)

 ジャズの香りもする、ベース主導のポストロック作品、といった趣です。トータスの2ndアルバム『Millions Now Living Will Never Die』あたりが好きな方は、気に入る作品だと思います。

 





Brokeback “Field Recordings From The Cook County Water Table” / ブロークバック『フィールド・レコーディングス・フロム・ザ・クック・カウンティ・ウォーター・テーブル』


Brokeback “Field Recordings From The Cook County Water Table”

ブロークバック 『フィールド・レコーディングス・フロム・ザ・クック・カウンティ・ウォーター・テーブル』
発売: 1999年7月20日
レーベル: Thrill Jockey (スリル・ジョッキー)

 トータスのベーシスト、ダグラス・マッカムによるプロジェクトの1作目です。本作には、シカゴ・アンダーグラウンドのロブ・マズレクとノエル・クーパースミス、トータスのジョン・マッケンタイアなどがレコーディングに参加しています。

 タイトルのとおり、フィールド・レコーディングされた自然や日常の音と、ベースを中心にしたアンサンブルが溶け合う1作。アンビエントな雰囲気も流れ、音響を前景化させた1面もある作品ですが、6弦ベースとコントラバスを駆使し、思いのほか多彩な世界観を作り出しています。

 1曲目「After The Internationals」は、複数のベースが絡み合い、アンサンブルを構成する1曲。当然ながら、重心が低音にあるサウンドです。中盤から入ってくるコルネットの音色が、ベースとのコントラストで、非常に鮮烈に感じられます。

 2曲目「Returns To The Orange Grove」は、イントロからフィールド・レコーディングされた音源が使われています。日常の音とベースの音が、レイヤーのように重なり、やがて溶け合う展開。どんな音がフィールド・レコーディングされているかは、実際に聴いて確かめてみてください。

 3曲目「The Field Code」は、音数の少ないミニマルなイントロから、ギターとベースとシェイカーが、絡み合うようにアンサンブルを編み込んでいく1曲。

 7曲目「The Wilson Ave. Bridge At The Chicago River, 1953」は、イントロからフィールド・レコーディングされた音源が使われています。聴いているうちに、楽器の音とフィールド・レコーディングの音が溶け合い、どれが楽器の音で、どれがフィールド・レコーディングの音なのか、境界線が曖昧に感じられます。

 11曲目「The Great Banks」はボーカル入りの曲。ボーカルを担当しているのは、ステレオラブのメアリー・ハンセンです。ボーカル入りといっても歌詞があるわけではなく、声を一種の楽器として取り入れている、と言った方が適切です。ボーカルと伴奏という関係ではなく、声が音楽に自然に溶け込み、サウンドに暖かみと奥行きをもたらしています。

 フィールド・レコーディングと、ベースを主軸にしたバンドの音を合わせた…と言うと、実験的でとっつきにくい印象を持たれるかもしれませんが、すべての音を公平に扱い、ひとつの音楽に融合した、優しいサウンドを持ったアルバムです。

 しかし、誰にでもオススメできるか?と問われると、正直そういう作品ではないのも事実。ベース・フェチの方は、聴いてみてはいかがでしょうか。ただ、一般的な意味でのポップな作品ではありませんし、ベースがゴリゴリに弾きまくる作品でもありませんので、ご注意を。