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At The Drive-In “In/Casino/Out” / アット・ザ・ドライヴイン 『イン・カジノ・アウト』


At The Drive-In “In/Casino/Out”

アット・ザ・ドライヴイン 『イン・カジノ・アウト』
発売: 1998年8月18日
レーベル: Fearless (フィアレス)
プロデュース: Alex Newport (アレックス・ニューポート)

 メキシコ国境に近い街、テキサス州エルパソ出身のバンド、アット・ザ・ドライヴインの2ndアルバム。

 前作『Acrobatic Tenement』は、カリフォルニア州のファンジン兼レコード・レーベル、フリップサイド(Flipside)からのリリースでしたが、本作は同じくインディーズながら、より大規模なレーベル、フィアレスからのリリース。

 パンク・ロックが持つ疾走感と初期衝動。プログレッシヴ・ロックが持つ複雑性。その両方を持ち合わせ、テクニカルかつスリリングな演奏を繰り広げるのが、アット・ザ・ドライヴインの特徴であり魅力です。

 1曲目の「Alpha Centauri」から、すべての楽器が前のめりになり、エモーションをそのまま変換したかのような音が噴出。荒々しさと高度なテクニックが共存したアンサンブルを展開していきます。とにかく溢れ出るパワーと疾走感がすごいです。

 2曲目「Chanbara」は、ダンサブルなリズムを母体に、絶叫するボーカル、唸りをあげるギター、強靭なリズム隊が絡み合い、複雑かつテンションの高い演奏を繰り広げます。確認できなかったのですが、タイトルの由来は、日本語のチャンバラでしょうか。

 3曲目「Hulahoop Wounds」は、ややテンポを抑え、テンションも控えめなイントロからスタート。しかし、後半は各楽器が競い合うようにフレーズを繰り出し、熱を帯びたアンサンブルへと発展。

 4曲目「Napoleon Solo」は、ギターとボーカルのみの不気味なほど抑えたイントロからスタート。しかし、そこから徐々にテンションを上げ、やがて感情が爆発。1曲の中でのコントラストが鮮明なアレンジ。

 5曲目「Pickpocket」は、イントロからパンキッシュに疾走する1曲。ただ、このバンドらしいと言うべきか、リズム構造は単純ではなく、各楽器とも地中から噴き出すマグマのように前のめり。ギターは複雑にねじれたフレーズを、曲芸的にくり出していきます。

 6曲目「For Now..We Toast」は、イントロから縦の揃った演奏が耳に残る1曲。ピッタリとタイトに合わせる部分と、ラフに躍動する部分があり、リズムのコントラストが鮮やか。

 7曲目「A Devil Among The Tailors」は、電子ノイズのようなサウンドがイントロに用いられ、その後も複雑怪奇なアンサンブルが繰り広げられる1曲。

 8曲目「Shaking Hand Incision」では、複雑かつ立体的なドラムに、他の楽器が絡み合うように重なり、巨大な塊となって転がるようなアンサンブルが展開。疾走感と一体感を併せ持った、耳に襲いかかってくるかのような1曲です。

 9曲目「Lopsided」は、ドラムの立体的でドタバタしたリズムに合わせ、他の楽器もタテを意識しリズムを刻んでいく1曲。タイトな部分と、リラクシングな部分があり、緩急をつけて盛り上げていきます。

 10曲目「Hourglass」は、ピアノと電子音が用いられた、ミドルテンポのメロウな1曲。ボーカルも絶叫は控え、丁寧に歌い上げます。

 11曲目「Transatlantic Foe」は、ギターのアルペジオとドラムによる静かなイントロから始まり、緩急のあるアンサンブルが展開する1曲。再生時間0:58あたりからの急加速など、テンポと音量の両面でメリハリがあり、多様な顔を見せるアレンジです。

 キレ味の鋭い、尖ったサウンドと演奏が前面に出たアルバム。ギターを例にとっても、歪んでいるのは確かなのですが、ハードロック的な重厚なサウンドとは違う、鋭利で耳に刺さるようなサウンドです。

 アンサンブルには、前述のとおりプログレ的な複雑さがあり、演奏とボーカルにはパンクに通ずる初期衝動の爆発があり、とにかくテンションの高い1作。

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Two Gallants “Two Gallants” / トゥー・ギャランツ『トゥー・ギャランツ』


Two Gallants “Two Gallants”

トゥー・ギャランツ 『トゥー・ギャランツ』
発売: 2007年9月25日
レーベル: Saddle Creek (サドル・クリーク)
プロデュース: Alex Newport (アレックス・ニューポート)

 カリフォルニア州サンフランシスコ出身の2ピース・バンド、トゥー・ギャランツの3rdアルバム。2人とも複数の楽器をこなしますが、基本編成はギター・ボーカルとドラム。

 前作『What The Toll Tells』では、アコースティック・ギターを主軸にした2ピースとは思えぬ、荒々しく躍動的なサウンドを響かせていたトゥー・ギャランツ。その音楽性は、フォークとブルースとパンクが融合した、とでも言いたくなるものでした。

 およそ1年半ぶりとなる本作では、ダイナミズムは抑えめに、よりフォーク色の濃い、牧歌的な演奏が展開されています。パンクやオルタナティヴ・ロックの要素よりも、ルーツ・ミュージックが前景化されたアルバムとも言えるでしょう。

 1曲目「The Deader」は、空気に染み入るようなギターのイントロに続いて、ゆるやかな躍動感を伴った立体的なアンサンブルが展開する1曲。バンド全体が、一体の生き物のように、いきいきと進行します。

 2曲目「Miss Meri」では、コミカルなギターのイントロから始まり、ドラムが切れ味鋭くリズムを刻んでいきます。この曲は、とにかくドラムが素晴らしく、歌うように表情豊か。

 4曲目「Trembling Of The Rose」は、アコースティック・ギターとボーカルを中心に据え、ストリングスが随所でヴェールのように、全体を包み込む1曲。

 6曲目「Ribbons Round My Tongue」は、ギターとハーモニカが織りなす穏やかなイントロに導かれ、ブルージーなボーカルがメロディーを紡いでいく1曲。音数を絞った隙間の多いアンサンブルですが、スカスカという感覚は無く、一音一音が染み入るように響きます。再生時間2:39あたりから始まる、泣きのハーモニカも聴きどころ。

 7曲目「Despite What You’ve Been Told」は、チクタクチクタクと軽やかにリズムを刻むギターに、パワフルなバスドラが重なり、徐々に立体感と躍動感を増していきます。

 9曲目「My Baby’s Gone」は、ギターとボーカルを中心とした、ゆっくりと音が広がるパートと、バンドが躍動感たっぷりにスウィングするパートが交互に訪れる、コントラストが鮮やかな1曲。

 躍動感とダイナミズムにおいては、前作より控えめ。しかし、いきいきとした躍動的なアンサンブルは健在です。音量や音数は抑えめに、音の組み合わせによってダイナミズムを演出する、よりアンサンブルに重きを置いたアルバムとも言えます。

 個人的には、パワフルな音像と、パンキッシュな疾走感を持った、前作の方が好みですが、本作も優れた質を持った作品であることは、間違いありません。