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Bishop Allen “Bishop Allen & The Broken String” / ビショップ・アレン『ビショップ・アレン・アンド・ザ・ブロークン・ストリング』


Bishop Allen “Bishop Allen & The Broken String”

ビショップ・アレン 『ビショップ・アレン・アンド・ザ・ブロークン・ストリング』
発売: 2007年7月24日
レーベル: Dead Oceans (デッド・オーシャンズ)

 ニューヨーク市ブルックリン出身のバンド、ビショップ・アレンの2ndアルバムです。

 個人的に大好きなバンド、ビショップ・アレン。彼らの魅力は、楽曲もサウンドもポップで親しみやすいのに、アンサンブルは立体的でグルーヴ感も抜群なところ。

 本作も曲によってキュートだったり、ローファイ風だったり、カラフルなサウンドと共に躍動感あふれるバンド・サウンドを響かせています。

 2曲目「Rain」は、テンポも速めで、疾走感のある1曲。ドラムのドタバタ感が絶妙にローファイの香りを漂わせていて良い。各楽器のリズムの組み合わせで、加速感を出していて、本当に素晴らしいアンサンブル。エレキ・ギターは、音作りもフレーズもシンプルなのに、いちいち耳に残ってしまう。

 3曲目「Click, Click, Click, Click」は、アコースティック・ギターのアルペジオから始まり、徐々に音が増えていく展開。再生時間1:05あたりからフルバンドになり、いきいきと躍動を始めるところのコントラストも秀逸。

 このバンドは、本当にムダな音を使わず、鮮やかにコントラストや疾走感、躍動感を演出できるバンドだと思います。言い換えれば、引き算のできるバンド。再生時間1:51あたりから、もう一段シフトが上がるところも、カッコ良すぎて泣ける。

 6曲目「Like Castanets」は、アコースティック・ギターがフィーチャーされ、音色的にはカントリーに近いのですが、パーカッションやトランペットが曲に色彩を足し、彼ら特有のポップスに仕上がっています。この曲もアンサンブルが素晴らしい。

 10曲目「Middle Management」は、歪んだエレキ・ギターとパワフルなドラムが、ハイテンポで駆け抜けていく、ガレージ風味のロックな1曲。とはいえ、このバンドが持つポップでカラフルな魅力は、全く損なわれていません。

 今作も本当に素晴らしいアルバムです。カントリーやガレージを感じさせる要素もありながら、決して特定のジャンルに染まることはなく、オリジナリティを保ったまま、カラフルなサウンドと、躍動感あふれるアンサンブルを響かせます。

 このアルバムを含めて、ビショップ・アレンの作品は全て高いクオリティを保っていると思います。個人的に、心からオススメしたいバンド。

 





Bishop Allen “Grrr…” / ビショップ・アレン『Grrr…』


Bishop Allen “Grrr…”

ビショップ・アレン 『Grrr…』
発売: 2009年3月10日
レーベル: Dead Oceans (デッド・オーシャンズ)

 ニューヨーク市ブルックリン出身のバンド、ビショップ・アレンの3rdアルバムです。

 日本での知名度はいまいちですが、僕はこのバンドがめちゃくちゃ好きなんです。彼らの魅力を一言であらわすと、楽曲とサウンド・プロダクションはポップでカラフル、アンサンブルは立体的で躍動感とグルーヴ感もある、本当に聴きどころばかりの素晴らしい音楽をクリエイトし続けています。(一言で終わらなかった…)

 本作『Grrr…』も、キュートでカラフルな極上のポップスでありながら、アレンジやサウンドには実験的な要素もあり、素晴らしいバランス感覚で作られたアルバムです。

 「おもちゃ箱をひっくり返したような」という表現がありますが、本作はまさにおもちゃ箱をひっくり返したように、煩雑かつカラフルで、子供のおもちゃ箱だと思っていたら、ガチなモデルガンとか鉄道模型も出てきた!みたいなアルバムです。

 1曲目「Dimmer」では、耳元で歌っているかのような音のボーカルに、次々と楽器が加わり、立体的でグルーヴ感あふれるアンサンブルが展開されます。再生時間1:20からの、バンド全体で前進していくような、各楽器が絡み合い、追い越し合うようなリズム・デザインもたまらない。再生時間1:58あたりからの展開も、コントラストを演出していて、楽曲の世界観を著しく広げています。

 2曲目「The Lion & The Teacup」は、イントロから徐々に楽器が増加し、それに比例してリズムが立体的になっていく展開が心地よい1曲。

 5曲目「Oklahoma」は、ギターポップのようなカラフルで甘い耳ざわりのサウンド。ですが、アンサンブルはちょっと複雑で、歌メロ以外の部分にも聴きごたえがあります。このあたりのバランス感覚とポップ・センスには脱帽。

 9曲目の「Shanghaied」は、本作のベスト・トラックです。わずか2分30秒の間に、多種多様な楽器が使われ、サウンドも色彩豊かなのですが、ムダな音がひとつも無い。フックだらけの音楽。

 イントロのドタバタした感じのドラムもいいし、アコギの音とリズムもいい。そのあとに入ってくる「ラーララー…」というコーラスも、その裏で鳴っているマレット系の打楽器の音も、有機的にアンサンブルを構成していて、音楽がいきいきと躍動しています。

 この曲は、エレキ・ギターの音も最高。アンプ直で音作りしたような、シンプルなサウンドですが、ところどころに入ってくるフレーズがアクセントになっていて、耳に残ります。再生時間1;50あたりでは「ジャーン」って弾いただけなのに、この上なくテンションが上がります。

 アルバムを通して聴いても、本当にポップで、奥が深く、長く付き合える素晴らしい1枚だと思います。心からオススメしたい作品です。

 ピッチフォークのレビューでは、10点満点で3.5という低評価。ですが、僕の評価だと、9.2ぐらいはつけたい名盤です!

 残念ながら、このアルバムは今のところデジタル配信されていないようです…。ビショップ・アレンの他のアルバムは配信されてるのに…。