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Bright Eyes “Cassadaga” / ブライト・アイズ『カッサダーガ』


Bright Eyes “Cassadaga”

ブライト・アイズ 『カッサダーガ』
発売: 2007年4月10日
レーベル: Saddle Creek (サドル・クリーク)
プロデュース: Mike Mogis (マイク・モギス (モジス, モーギス))

 シンガーソングライターのコナー・オバーストを中心に結成された、ネブラスカ州オマハ出身のバンド、ブライト・アイズの7枚目のアルバムです。

 タイトルの「カッサダーガ」とは、フロリダ州内にある非法人地域の地名。スピリチュアリズムの支持者が多く暮らし、「Psychic Capital of the World(世界の超能力者の首都)」とも呼ばれるらしい。

 ブライト・アイズというと、ボブ・ディランやニール・ヤングが引き合いに出されることもあるように、歌を中心に据えたフォーキーなサウンドを持つバンド、というイメージが一般的です。

 同時に、懐古主義には陥らず、現代的なセンスも併せ持ったバンド。本作でも、フォークやカントリーなどのルーツ・ミュージックを下敷きにしながら、様々な楽器を導入し、カラフルで躍動感あふれるサウンドを響かせています。

 1曲目の「Clairaudients (Kill Or Be Killed)」は、イントロからスポークン・ワードと、ぶつ切りになった音の断片や持続音が空間を埋めつくす、アヴァンギャルドな音像。およそカントリーからは遠い、実験音楽のようなサウンドが続きますが、再生時間2分を過ぎたところで、アコースティック・ギターとボーカルが入ってくると、明確なフォームを持った音楽が進行していきます。

 しかし、奥の方では電子的な持続音や、様々な楽器の音が鳴っており、音響派のような雰囲気も漂います。徐々に楽器の種類が増え、種々のサウンドが多層的に重なる、壮大な展開。再生時間4:13あたりからは、カントリー系のオーガニックな音で作りあげるオーケストラとでもいった聴感。

 2曲目「Four Winds」では、イントロからバイオリンが大活躍。ギターやオルガンやマンドリンらしき音も聞こえ、サウンドもアンサンブルも、色彩豊かでゴージャス。

 4曲目「Hot Knives」は、ざらついた質感のギターに、エフェクト処理されたボーカル、立体的でパワフルなドラム、アンサンブルを包みこむストリングス。それら全てが有機的にアンサンブルを編み上げる躍動感あふれる1曲。カントリーを下敷きに、オルタナティヴ色の濃いアレンジとサウンドです。

 11曲目の「Coat Check Dream Song」は、ドラムとパーカッションが、立体的にリズムを組み上げるポリリズミックな1曲。トータスのジョン・マッケンタイアが、パーカッションで参加しています。ドラムとパーカッション以外の楽器も、有機的に絡み合ってグルーヴしていて、本当にすばらしいアンサンブル。個人的に大好きな曲です。

 ナチュラルな生楽器のサウンドと、オルタナ的なジャンクな耳ざわり、エレクトロニカ的な音響が、バランス良く融合したアルバムだと思います。懐古主義や過去のジャンルの焼き直しではなく、わざとらしく実験性を見せつけるでもない、絶妙のバランス。

 ルーツ・ミュージックの地に足がついた魅力と、アメリカらしい革新性と実験性が、ポップなかたちで結実した名盤です!

 





Bright Eyes “I’m Wide Awake, It’s Morning” / ブライト・アイズ『アイム・ワイド・アウェイク・イッツ・モーニング』


Bright Eyes “I’m Wide Awake, It’s Morning”

ブライト・アイズ 『アイム・ワイド・アウェイク・イッツ・モーニング』
発売: 2005年1月25日
レーベル: Saddle Creek (サドル・クリーク)
プロデュース: Mike Mogis (マイク・モギス (モジス, モーギス))

 シンガーソングライターのコナー・オバーストを中心に結成された、ネブラスカ州オマハ出身のバンド、ブライト・アイズの2005年にリリースされたアルバム。本作『I’m Wide Awake, It’s Morning』と、『Digital Ash In A Digital Urn』は同日に2枚同時リリースされました。

 アコースティック・ギターを主軸に、フォークやカントリーを感じさせるサウンド。しかし、アレンジやサウンドにはインディーロックの香りも漂い、回顧主義なだけではない、現代的な雰囲気も持ち合わせたアルバムです。

 アルバム・タイトルのとおり、朝になって、自分も含め自然や動物たちが活動を始めるような、いきいきとした躍動感に溢れた作品。ボーカルの若さと渋さのバランスが絶妙な、わずかに枯れたエモーショナルな歌唱も良いです。

 1曲目「At The Bottom Of Everything」は、1分ほどのスポークン・ワード…というよりセリフに続いて、アコースティック・ギターがシャカシャカとカッティングを始め、曲がスタート。セリフに続いてからのスタートのためか、楽器の音もボーカルの声とメロディーも、非常に音楽的にいきいきと響きます。

 2曲目の「We Are Nowhere And It’s Now」は、朝の散歩のように、穏やかな1曲。優しく絞り出すようなボーカリゼーションと、緩やかにグルーヴするバンドの相性も抜群。ホーンの導入や、再生時間2:10あたりからのギターのサウンドなど、音楽の幅の広さも感じさせます。随所に挟まれるギターのフレーズがアクセント。

 7曲目「Another Travelin’ Song」は、ノリノリにグルーヴしながら駆け抜けていく、カントリー調の1曲。リズムを下支えするベースのリズムも、気持ちよく響きます。ロック的なノリではなく、カントリー・ウェスタン風のノリ。ギターのフレーズもカントリー色が濃いのに、全体はカントリーくさくなり過ぎないのは、サウンド・プロダクションとボーカルの影響かなと思います。

 アルバムをとおして、生楽器のオーガニックなサウンドを用いた、フォーキーなサウンドが響きます。ブライト・アイズのアルバムのなかでも、カントリー色の濃い1枚。

 他のアルバムには、もっと楽器の音色やアレンジに、オルタナティヴな要素が強く出ているものもありますが、本作はオーガニックなサウンドを重視し、結果として歌が前景化された1作になっているんじゃないかと思います。