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Love Battery “Between The Eyes” / ラヴ・バッテリー『ビトウィーン・ジ・アイズ』


Love Battery “Between The Eyes”

ラヴ・バッテリー 『ビトウィーン・ジ・アイズ』
発売: 1991年2月7日
レーベル: Sub Pop (サブ・ポップ)
プロデュース: Conrad Uno (コンラッド・ウノ), Jack Endino (ジャック・エンディーノ), John Auer (ジョン・オーアー), Steve Fisk (スティーヴ・フィスク)

 1989年にシアトルで結成されたバンド、ラヴ・バッテリーの1stアルバム。バンド名の由来は、イギリスのパンク・バンド、バズコックス(Buzzcocks)の同名楽曲から。

 本作は1990年に7曲入りのEPとして発売され、翌年の1991年にボーナス・トラックを加え10曲入りのアルバムとして発売されています。

 1989年に結成、シアトル出身、サブ・ポップ所属、コンラッド・ウノやジャック・エンディーノがプロデュースを担当、とデータだけ見るとグランジ・バンドなのだろうなと想像できます。また、前述のとおり、バズコックスの曲目からバンド名を決定したというエピソードも、80年代のMTVやアリーナ・ロックではなく、オルタナティヴな音楽を志向していることを示唆していると言えるでしょう。

 実際に彼らが鳴らす音は、グランジにカテゴライズされる要素も多分に持っていますが、サイケデリックな空気も持ち合わせており、いわゆるステレオタイプのグランジ・サウンドとは一線を画する音楽性を持っています。

 1stアルバムである本作では、グランジ的と言えるジャンクなギター・サウンドと、揺らめくサイケデリックなサウンドとアレンジが溶け合い、歪み一辺倒だけではない、カラフルな音楽を展開しています。

 1曲目の「Between The Eyes」から、早速トレモロのかかったギターが空間に広がり、そこにソリッドな歪みのギターが重なり、多層的なサウンドを作り上げます。どこか物憂げで投げやりなボーカルも、グランジとサイケの空気感の中間のような雰囲気。

 3曲目「Highway Of Souls」は、アコースティック・ギターと、空間系エフェクターを用いたクリーントーンのギター、穏やかなボーカルが溶け合う、幻想的な雰囲気の1曲。静かな前半から、再生時間1:22あたりで音数が増加し、コンパクトなサイケ・ロックが繰り広げられます。

 4曲目「Orange」は、複数のギターが厚みのあるサウンドを作り上げ、ボーカルは浮遊感のあるメロディーを歌う、シューゲイザーの香り漂う1曲。

 6曲目「Before I Crawl」は、ボーカルとコーラスワークも含め、立体的なアンサンブルが展開される1曲。各楽器とのソリッドな音色で、音が機能的に絡まり、一体感とグルーヴ感があります。エモーショナルなメイン・ボーカルと、コーラスがコール・アンド・レスポンスのように折り重なりアレンジも、楽曲に奥行きをプラス。

 7曲目「Ibiza Bar」は、イギリスのプログレッシブ・ロック・バンド、ピンク・フロイド(Pink Floyd)のカバー。ワウの効いたギターと、スライド・ギターのように滑らかに滑るコード・ストロークが、サイケデリックな空気を演出する1曲。

 グランジ世代まっただ中のバンドですが、音楽的にはグランジだけではなく、サイケデリックな空気を多分に持ったバンドです。1stアルバムとなる本作は、特にギターのサウンドが多彩で、私見ですがラヴ・バッテリーの作品の中で、最もサイケ色が強いと思います。

 バズコックスの曲目から取ったバンド名、そしてこのアルバム7曲目に収録されたピンク・フロイドのカバーが、彼らの音楽性を端的にあらわしているとも言えるでしょう。サイケデリックなサウンドとアレンジも持ちながら、あくまで地に足の着いた形で、コンパクトなロックにまとめあげています。

 メンバー・チェンジも多く、当時のグランジ・ブームが逆に彼らの音楽性にとっては向かい風となってしまったのか、大ブレークは果たせなかったバンドですが、ブームやメジャー・レーベルに迎合しなかったからこそ、当時の一般的なグランジとは一線を画する、オリジナリティのある音楽を生み出せたのかもしれません。

 





Love Battery “Dayglo”/ ラヴ・バッテリー『デイグロー』


Love Battery “Dayglo”

ラヴ・バッテリー 『デイグロー』
発売: 1992年1月1日
レーベル: Sub Pop (サブ・ポップ)
プロデュース: Conrad Uno (コンラッド・ウノ), John Auer (ジョン・オーアー)

 ワシントン州シアトル出身のバンド、ラヴ・バッテリーの2ndアルバム。グランジ全盛の1992年にリリースされた本作、プロデュースは当時サブ・ポップの作品を多数手がけたコンラッド・ウノと、ザ・ポウジーズ(The Posies)のジョン・オーアーが務めています。

 前述のとおり、1992年に発売された本作。グランジにカテゴライズするサウンドを持った、というよりグランジというシーンの一部を作ったバンドと言ってもいいでしょう。ラヴ・バッテリーのサウンドは、いわゆるグランジにカテゴライズされるざらついた耳ざわりを持ちながら、サイケデリックな空気も持ち合わせているところが特徴です。

 下品に歪んだギター、物憂げなボーカルといったグランジ的要素と、ドラッギーに同じフレーズを繰り返すギター、ゆるやかにグルーヴするアンサンブルなどサイケデリックな要素が溶け合った、彼ら特有のサイケ・グランジを響かせています。

 1曲目「Out Of Focus」は、ゆったりとしたリズムに乗せて、激しく歪んだ2本のギターがそれぞれコード弾きと単音でのフレーズを繰り返し、エモさと憂鬱さを併せ持ったボーカルの歌唱が、さらにサイケデリックな空気をプラスします。ざらついたグランジ的サウンドと、リフレインの多いサイケデリックなアレンジが共存しているのが、このアルバム全体を通しての特徴。

 2曲目「Foot」は、各楽器とボーカルが複雑に絡み合いながら、疾走していく1曲。アレンジにもハーモニーにも濁りがあり、アングラな空気が漂います。

 4曲目「See Your Mind」は、切れ味鋭いギターが、楽曲を加速させていく1曲。左チャンネルの激しくコードをかき鳴らすギターと、右チャンネルのスライド・ギターのように糸を引くフレーズのバランスが秀逸。

 5曲目「Side (With You)」は、アコースティック・ギターと、原音がわからないぐらいまで歪んだディストーション・ギターが。それぞれコードを弾く厚みのあるイントロからスタート。その後も音色の異なるギターが絡み合う、音楽的にもサウンド的にも奥行きのある1曲。

 8曲目「Blonde」は、伸びやかなサウンドの単音弾きのギターと、ジャンクに歪んだコード弾き担当のギターが重なる1曲。やや奥から聞こえるボーカルは、酩酊感のあるフレーズを歌い、シューゲイザー色も感じます。

 9曲目「Dayglo」は、イントロの臨場感溢れる音でレコーディングされたドラムに、まず耳を奪われます。立体的で、各楽器が絡み合う、アンサンブル重視の1曲。

 10曲目「23 Modern Stories」は、独特の濁りと揺らぎのあるギターから、サイケデリックな香りがたちこめる1曲。ボーカルも伴奏に引っ張られるように、不安定トリップ感のあるメロディーを紡ぎます。

 グランジ的なソリッドでざらついたサウンドと、揺らぎのあるサイケデリックなアレンジが、分離することなく融合しているのが、このアルバムの魅力。ブームに乗っただけのバンドではなく、独自の音楽性を持ったバンドです。