Rumah Sakit “Obscured By Clowns”
ルマ・サキッ 『オブスキュアード・バイ・クラウンズ』
発売: 2002年6月4日
レーベル: Temporary Residence (テンポラリー・レジデンス)
カリフォルニア州サンフランシスコ出身のインスト・マスロック・バンド、ルマ・サキッの2ndアルバム。
「マスロック」と一口に言っても、その音楽性はバンドによって様々。インドネシア語で病院を意味する、ルマ・サキッという奇妙なバンド名を持ったこのバンドの特徴は、各楽器が奏でる幾何学的に制御されたかのようなフレーズが、機械のように組み合わさり、一体感のあるアンサンブルを構成するところ。
前作『Rumah Sakit』と比較すると、2作目となる本作では、さらに理路整然とした、複雑かつ正確なアンサンブルが展開。前作で聞かれた荒々しい攻撃性はやや控えめになり、全てが計算で作り込まれたかのような演奏が繰り広げられます。
1曲目「Hello Beginning, This Is My Friend… The End」は、アルバム1曲目ということもあり、バンドがさりげなく音合わせを始めるかのような、自由でラフな雰囲気の1曲。
2曲目「New Underwear Dance」は、各楽器が折り重なるように絡み合い、織物のように有機的で一体感のあるアンサンブルを構成していく1曲。随所でリズムの切り替えや、テンポの加速と減速があり、楽曲が姿を変えながら、スリリングに進行していきます。
3曲目「No-One Likes A Grumpy Cripple」は、タイトでシンプルなドラムに、ベースが絡みつくようにフレーズを重ね、さらにギターが重なり、全ての楽器が複雑に絡み合うようなアンサンブルが展開。
5曲目「Obscured By Clowns」は、イントロのギターのシンプルなフレーズに導かれ、徐々に楽器が加わり、立体的で緩やかな躍動感のある演奏が展開される1曲。10分を超える大曲ですが、次々と展開があり、壮大な絵巻物のよう。
6曲目「Are We Not Serious? We Are Rumah Sakit!」は、曲名は長いですが、30秒ほどのインタールード的な役割の1曲。曲というより、メンバーの声とミニマルなベースのフレーズのみで、スタジオでの一場面(悪ふざけ?)を切り取ったようなトラックです。
9曲目「Hello Friend, This Is My End… The Beginning」は、電子音らしきサウンドが鳴り響くイントロから始まり、バンドの音が次々と重なり、アンサンブルを作り上げていく1曲。サウンド・プロダクションの面でも、演奏の面でも、ジャンクな空気が充満しています。しかし、ハードルが高いというわけではなく、むしろチープとも言える音質が、キュートで親しみやすい雰囲気をプラス。
時にはハードな音色も用いて、攻撃性も持ち合わせていた前作から比べると、本作では各楽器ともシンプルな音色が多用され、よりアンサンブルに重きを置いたアルバムになっています。
テンポも抑えめの曲が多く、圧倒的なスピード感や、複雑怪奇なテクニカルなフレーズよりも、全ての楽器が組み合う、アンサンブルの正確性と表現力を追求した1作。