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Superchunk “Superchunk” / スーパーチャンク『スーパーチャンク』


Superchunk “Superchunk”

スーパーチャンク 『スーパーチャンク』
発売: 1990年9月25日
レーベル: Matador (マタドール)

 ノースカロライナ州チャペルヒル出身のバンド、スーパーチャンクのデビュー・アルバムです。

 「音圧が高い」というのとはちょっと違った、しかし迫力と臨場感のあるサウンドを持ったアルバムです。特に印象的なのが、ギターのサウンド。圧倒的にパワフルなわけでも、耳をつんざくほど鋭いわけでもないのに、心地よく鼓膜を揺らし、クセになります。

 アルバム全体にみずみずしい感性が溢れ、1stアルバムらしい初期衝動を閉じ込めたような空気もあり、ロックの魅力が凝縮された1作だと思います。

 1曲目の「Sick To Move」。各楽器の音を分離して認識できるものの、やや輪郭の丸い一体感のあるイントロです。しかし、再生時間0:23あたりで輪郭のくっきりしたサウンドになり、テンポもアップ。冒頭からリスナーの耳をつかむ展開です。その後も各楽器が前のめりに突っ走る、疾走感あふれる1曲。

 2曲目「My Noise」は、音圧が高いというのとはちょっと違う、厚みのあるギターのサウンドが、空間を埋め尽くします。ドンシャリではなく、全音域が分厚く、倍音豊かなサウンド。

 6曲目の「Slack Motherfucker」は、イントロから、前のめりな疾走感に溢れた1曲。若々しく青春を感じるボーカルの声と、コーラスワークも素晴らしい。ちなみにピッチフォーク(Pitchfork)選出の1990年代のベスト・ソングで、第81位に選ばれています。すごいのか、すごくないのか、リアクションに困る順位ですが(笑)

 7曲目「Binding」は、バンド全体がバウンドするような、躍動感と一体感のある1曲。ややルーズな雰囲気を持った、コーラスのハーモニーも絶妙。

 前述したとおりギターの音色が良い、ボーカルの声とコーラスワークも良い、全体のアンサンブルの一体感も良いアルバム。

 テクニックをひけらかすのではなく、圧倒的な轟音で押し流すのでもない、しかし躍動感と迫力のあるバンド・サウンドを響かせています。ボーカルの声を筆頭に、各楽器のサウンドから、若さとみずみずしさが溢れています。

 スーパーチャンクはこのアルバムに限らず、アレンジもサウンドも、オーバー・プロデュースにならないところが魅力だと思います。デビュー・アルバムである本作も、スーパーチャンク最高!と思わせてくれる1枚。

 





Superchunk “Foolish” / スーパーチャンク『フーリッシュ』


Superchunk “Foolish”

スーパーチャンク 『フーリッシュ』
発売: 1994年4月18日
レーベル: Merge (マージ)
プロデュース: Brian Paulson (ブライアン・ポールソン)

 ノースカロライナ州チャペルヒル出身のバンド、スーパーチャンクの4thアルバム。メンバーのマック・マコーンとローラ・バランスによって設立されたレーベル、Mergeからリリース。プロデュースはブライアン・ポールソン、ミックスはスティーヴ・アルビニが担当。

 デビュー当初からのスーパーチャンクの武器である、疾走感とドライヴ感はそのままに、バンドの音楽性の拡大を示す1枚です。テンポを抑えた曲が増え、アンサンブルも高度に練り上げられ、コントラストや迫力の演出が、格段に向上しています。
 
 さらに、音がいい。音圧が圧倒的に高いというわけではないのですが、無駄なプロデュースが無く、各楽器が生々しく、臨場感あふれるサウンドでレコーディングされています。

 アルバムの幕を開ける、1曲目は「Like A Fool」。ゆったりと堂々としたテンポの曲です。イントロは2本のギターが、それぞれ穏やかに単音フレーズとコードを弾いていくのですが、再生時間1:00あたりでフル・バンドになると、パワフルに躍動感を響かせます。ドラムの音が立体的にレコーディングされていて、下から響くような鳴り方。

 2曲目の「The First Part」は、そこまでテンポが速いわけではありませんが、ギターのフレーズや、ベースの音程の動くタイミングが推進力になって、ドライブ感が溢れる1曲です。楽曲が前に進んでいく力が、みなぎっています。

 3曲目「Water Wings」は、イントロから感情が吹き出したかのようなギターが曲を先導。ともに歪んだ2本のギターと、タイトなリズム隊、開放感のある高音ボーカルが一丸となって迫ってくる1曲。

 4曲目の「Driveway To Driveway」は、各楽器が絡み合うアンサンブルが心地よい、ミドルテンポの1曲です。ところどころ声が裏返りそうなギターのサウンドも、アクセントになって耳に残ります。

 10曲目「Revelations」は、嵐の前の静けさのようなイントロから、途中でテンポも音量も上がるコントラストが鮮やかな1曲。ドラムの立体的な音もかっこいい。

 サウンドもアンサンブルもオーバー・プロデュースにならず、ロックのかっこいい部分を凝縮したようなアルバムです。ここまでの3作と比べて、楽曲の幅やアレンジには洗練も感じます。しかし、前の3作が劣っているというわけでも、本作がメジャー的な作風になったというわけではありません。

 あくまで地に足が着いたかたちで、自分たちの音楽を追求する姿勢が、音にも滲み出た1作です。