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Don Caballero “Don Caballero 2” / ドン・キャバレロ『ドン・キャバレロ2』


Don Caballero “Don Caballero 2”

ドン・キャバレロ 『ドン・キャバレロ2』
発売: 1995年9月15日
レーベル: Touch And Go (タッチ・アンド・ゴー)
プロデュース: Al Sutton (アル・サットン)

 1991年に結成されたペンシルベニア州ピッツバーグ出身のマスロック・バンド、ドン・キャバレロの2ndアルバムです。プロデューサーが前作のスティーヴ・アルビニから、アル・サットンに交代しています。

 暴力的なまでにハードなサウンドで、変態的かつ緻密なアンサンブルを作り上げたデビュー作『For Respect』に続く2作目。本作では、ハードなサウンドはやや抑え目に、複雑怪奇なアンサンブルを構成しています。

 しかし、ただおとなしくなったというわけではなく、音量のみに頼るのではなく、リズムとコントラストによって、緊張感や迫力を演出した1作です。

 1曲目「Stupid Puma」では、イントロからシンプルなギターの音色が響き、ハードな轟音で押し切った前作との、明らかな違いを予感させます。ただ、緻密で複雑怪奇なアンサンブルは健在。この曲も各楽器が複雑に絡み合い、いわゆるロック的なグルーヴ感とは違う、瞑想的な雰囲気を生み出していきます。

 2曲目「Please Tokio, Please This Is Tokio」は、こちらもイントロから、ギターの音が軽く歪んだクランチ的なサウンド。各楽器が絡まるような、バラバラにくずれ落ちるような、緊張感のあるバランスで進行していく1曲です。

 4曲目「Repeat Defender」は、クランチ気味のギターと、手数の多いドラム、その隙間を埋めるようにベースが躍動するイントロから、時空を切り裂くように耳障りなギターが乱入してくる展開。10分を超える曲ですが、展開が目まぐるしく飽きさせません。

 6曲目「Cold Knees (In April)」は、イントロから不穏な空気が漂う1曲。複雑なリズムと、絡み合うようなアンサンブルに耳が向かいがちですが、ハーモニーとフレーズの音の運びにおいても、相当に変わったことをしています。

 前述したとおり、前作に比べるとハードなサウンドは後退し、代わりにアンサンブルやヴォイシングで不穏な空気やスリルを演出したアルバムであると思います。ただ、前作で聴かれた攻撃的なディストーション・ギターは、本作でも随所に効果的に挿入されています。

 ひたすらアグレッシヴに押し寄せる前作と、アレンジと音量の両面でコントラストを作り出し、より緊張感を与える本作、といった感じの差違があります。

 個人的にドン・キャバレロは大好きなバンドで、本作も完成度の高いアルバムであるのは事実ですが、他の作品と比べると過渡期の1作といった印象で、1番にはすすめないかな、というのが正直なところ。

 もちろん僕の主観ですから、このアルバムが1番好きという方もいらっしゃるでしょうし、気になったらこのアルバムも、ぜひ聴いていただきたいです。

 





Don Caballero “For Respect” / ドン・キャバレロ『フォー・リスペクト』


Don Caballero “For Respect”

ドン・キャバレロ 『フォー・リスペクト』
発売: 1993年10月10日
レーベル: Touch And Go (タッチ・アンド・ゴー)
プロデュース: Steve Albini (スティーヴ・アルビニ)

 1991年に結成されたペンシルベニア州ピッツバーグ出身のマスロック・バンド、ドン・キャバレロの1stアルバムです。(当人たちは「マスロック」にカテゴライズされるのを好んでいないようですが…) のちにバトルスを結成する、イアン・ウィリアムスが在籍していたことでも知られます。

 本作『For Respect』は、レコーディング・エンジニアにスティーヴ・アルビニを迎え、シカゴの名門タッチ・アンド・ゴーよりリリース。この情報だけでも、期待が高まります。

 前述したとおり、マスロックに定義されることの多いバンドですが、本作でも変拍子を多用した、緻密で複雑なアンサンブルが、硬くヘヴィーなサウンドで繰り広げられます。

 1曲目の「For Respect」は、イントロから、音のストップ・アンド・ゴーがはっきりした、メリハリのきいた演奏。再生時間0:07あたりで、バンドはピタリと止まるなか、ドラムだけはみ出すところなど、コントラストの演出も巧み。

 非常に硬質で、ハードロック的なサウンドの1曲目。アンサンブルは緻密でストイックですが、随所に遊び心も感じられる1曲です。例えば、1:15あたりからのバンドがブレイクを繰り返すところで、ドラムだけ「だるまさんがころんだ」で動いてしまうようなアレンジだとか、同じ部分1:27あたりのコントで使用されそうなとぼけた効果音の挿入など、シリアスになりすぎず、カラフルな印象を楽曲に加えています。

 2曲目「Chief Sitting Duck」は、前のめりに暴走するようなドラム、堅くハリのあるサウンドのベース、制御できずに暴発するようなギターが絡み合う1曲。冒頭から、ロックのラフな魅力と、緻密なアンサンブルが高次元で融合しています。

 5曲目「Rocco」は、上から叩きつけるような手数の多いドラムと、サウンドと音数の両面で押し寄せるようなギターが、聴き手に迫ってくる1曲。アルバムを通してですが、サウンドにも臨場感があります。

 8曲目「Our Caballero」は、ハードなサウンド、複雑なリズムで各楽器が絡み合う、マスロックかくあるべし!な1曲。再生時間1:32あたりからの、段階的に波が押し寄せるようなアレンジも迫力満点。

 1stアルバムですが、すでに音楽性とアンサンブルの精度は、かなりの完成度に達しています。その後のアルバム群に比べると、サウンドも展開もやり過ぎと思うぐらい、ハードでエッジが立ったアルバムだと思います。

 この後、さらに音楽性を広げていく彼らですが、デビュー作である本作も十分おすすめできるアルバムです!